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WHITE TIGER
第1章 memory
用を終えた先輩は俺の隣で手を洗っている。

俺は俺で顔を拭き終わり部署に戻ればいいだけなのだが、胸の動悸が収まらずなかなかその場から動けないでいる。

今部署に戻っても落ち着いて仕事をする自信がない。

つーか、絶対捗らねぇ。

もう少し気持ちを落ち着かせてから戻るか。


深呼吸をする俺の肩をポンッと叩いた先輩は



「女にフラれたぐらいで落ち込むなって!そのうちいい女が表れるよ!」



そう言い残してその場から出て行ってしまった。

宮野先輩に舞の事は話してない。

況してや、あんな黒埼とかいう変人の男の話なんかしていない。

しかし、同性同士だし人生でも先輩である宮野先輩には何も話さなくても全てお見通しらしい。

…まぁ、女にフラれたという問いに体して俺が否定しないということもある見抜いた一員だろうけど。





…こっちは必死で忘れようとしてんのに、何でそうやって思い出させるような事すんだよ。

これ以上、俺の傷口を広げないでくれ。

そっとしといてくれよ…。




忘れようとすればするほど、古傷の瘡蓋が剥がれて膿んでいく。

それは、全然完治しなくて、癒されなくて、真っ赤な血飛沫を上げてるようにも思えた。


















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