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あいの向こう側
第20章 影
その夏、俺は地獄だった。



地元の友人犬崎【いぬざき】(通称・ポチ)からは「お前甘いよ、
女にフラれて会社倒産して向こうの友達に騙されて借金50万だろ?
指3本で足りるぜ」と呆れられたけど。



21歳、就職して1年で〔さぁこれからだ!〕と意気込んでいた俺には地獄以外の何でもない。



『あっちー…………………』
実家の縁側で冷たい茶を飲みながら、
ぼけ~っと惚けた。


太陽の光がキツい。



『あれ?
葉【よう】、あんた居たのぉ?』
汗を拭きながら母がやってきた。
『バイト休みならさぁ、
畑耕してよ~。お父さん最近五十肩でしてくんないのよ』


『あ、そうだ。
ポチに借りてたDVD返さなきゃ…………』
俺はそそくさと逃げた。








『_____はぁ…………』
白いTシャツ。
カーゴパンツにサンダル。
プラプラと道を歩いた。


じりじり照らす太陽。

汗がぼたぼた落ちる。


広い畑が広がる田舎町。


姿がないのにセミの大合唱。夕方以降はカエルに切り替わる。


……………これが嫌で出たのになー。
専門と就職1年で戻ることになるとは…………




『あれぇ、
葉ちゃんじゃん!
戻っきたって本当だったのねぇ!』
畑の真ん中から俺に話しかけるのは、
隣の隣の隣のおばさん。


俺は頭を下げた。

____頼むから人の恥部を大声で怒鳴らないでくれ…………

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