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あいの向こう側
第19章 ねぇ
____住宅街に入る。
細く入り組んだ道。
ウィンカーを出す。
黄色い建物の駐車場に駐車した。
水色のタイルを歩く。タイルに動物たちの顔がある。
『…………あっ!!ママだ!』
私に気づいた娘が、帽子を被りながら駆けてきた。
『今日もお世話になりました』
保育士に頭を下げた。
『サラねぇ、今日ね、象さん描いたのー!』娘が画用紙を広げる。覚束ない手で。
『象さんとお空飛んだのよね?おうちでママにたくさん話そうね』保育士が丁寧に腰を曲げる。
さよーならー、と手を振った。
紙。
絵。
____いま離れたのに、もう木曜日のことがちらつく。
木曜日は5日後。
5日もある………。
セダンを走らせる。
『ママぁ、今日の夕ご飯なぁに?』
邪気のない娘。
『夕ご飯~~~そうねー、ステーキ買って帰ろうかな?』
『えっ!ジュージューのやつ?
うわぁ、パパとお兄ちゃん喜ぶねぇっ』
娘が手足をジタバタさせる。
私は左手を伸ばし、
音楽をかけた。
娘の好きなアニメのテーマソングが流れる。
カサカサカサカサカサカサカサカサ
合間で聞こえる音。
風か何か分からない。
彼の喉仏の隆起が浮かび、
私は小さく咳払いをした。
いつまで牽制し合えるのだろう。
牽制を投げだした時、私はきっと_____……………
再びジワッと広がったぬるいものに、
また気づかないふりをした。
〔おわり〕
細く入り組んだ道。
ウィンカーを出す。
黄色い建物の駐車場に駐車した。
水色のタイルを歩く。タイルに動物たちの顔がある。
『…………あっ!!ママだ!』
私に気づいた娘が、帽子を被りながら駆けてきた。
『今日もお世話になりました』
保育士に頭を下げた。
『サラねぇ、今日ね、象さん描いたのー!』娘が画用紙を広げる。覚束ない手で。
『象さんとお空飛んだのよね?おうちでママにたくさん話そうね』保育士が丁寧に腰を曲げる。
さよーならー、と手を振った。
紙。
絵。
____いま離れたのに、もう木曜日のことがちらつく。
木曜日は5日後。
5日もある………。
セダンを走らせる。
『ママぁ、今日の夕ご飯なぁに?』
邪気のない娘。
『夕ご飯~~~そうねー、ステーキ買って帰ろうかな?』
『えっ!ジュージューのやつ?
うわぁ、パパとお兄ちゃん喜ぶねぇっ』
娘が手足をジタバタさせる。
私は左手を伸ばし、
音楽をかけた。
娘の好きなアニメのテーマソングが流れる。
カサカサカサカサカサカサカサカサ
合間で聞こえる音。
風か何か分からない。
彼の喉仏の隆起が浮かび、
私は小さく咳払いをした。
いつまで牽制し合えるのだろう。
牽制を投げだした時、私はきっと_____……………
再びジワッと広がったぬるいものに、
また気づかないふりをした。
〔おわり〕