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あいの向こう側
第7章 堕落する君と
『…………………………………………
ごめんなさい』



俺は目の前で背を丸めて謝る沙耶を睨む。


『何で辞めちゃうの?
勿体ない、せっかく雇われたのに……
仕事ナメてんの?』


俺は腕を組み、
縮こまる沙耶を見下ろした。


『……ごめん、
直ぐバイトするから……
来月分の支払いは間に合うようにする』



俺は沙耶に背を向け、
自分の部屋へと無言で戻った。



―――とあるアパートの2階。

俺と沙耶は、
恋人でもないし夫婦でもない。ましてや兄妹でもなかった。


ルームシェアをしている友人同士だ。


部屋が2つあり、
元々俺は親友の男・高梨【たかなし】と同居していた。
高梨の親が倒れてしまい、急遽田舎に転居することになった。

「契約違反になるから、
代わりの子を居れていいかな」と連れて来たのがこの沙耶である。


何回か面談のようなものをした。
何より学生時代から信頼している高梨の紹介とあって、
沙耶を入居させることに異存はなかった。



沙耶はスラリと細身。
顔はフツー。
流行をある程度取り入れながら、自分の世界を持っている女子。
清潔感もある。
物静かで大人しく同居ルールもきちんと守るのだが………………

ルームシェアを開始してから2年。


沙耶はこの間(かん)に2度転職をしていた。



俺は自室に戻ると、
PC作業を再開した。

会社から持って帰った仕事を続ける。
(………ったく、
何で怒鳴られたからって凹んで辞めちゃうかねぇ…)




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