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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
「ヴィヴィの事、好きなんだ。
ずっと見ていた。物心付いた頃からずっと――。
僕と、付き合って欲しい」
芝生が広がる裏庭に、北風がびゅうと吹きつける。
それは紺色のダッフルコートを纏った男女の間をすり抜け、その先に降り積もる茶色い落ち葉を巻き上げていく。
1月8日。
放課後に呼び出されたヴィヴィは、目の前に立つ、高等部3年の男子を見上げていた。
サッカー部のエース、そして卒業後は実業団からオファーが掛かっている、将来有望なその生徒は、学園内で知らない者はない有名人。
ヴィヴィは顔を合わす度に挨拶をしてくれ、軽口を叩く間柄だったその先輩に対し、薄い唇を開いた。
「ありがとうございます。その……直接こうやって、気持ちを伝えてくれて……。とても勇気のいる事だと、思います」
「いや……、ヴィヴィの方こそ。……ごめんな、シーズン中で忙しいのに」
その気遣いに、小さく首を振ったヴィヴィは、真っ直ぐに先輩を見つめた。
「正直に言います。大好きな人がいるんです。その人事しか考えられなくて、頭の中が一杯なんです」
「……――っ そう、か……」
馬鹿正直に自分の状況を語ったヴィヴィに、先輩は息を詰まらせた後、とてもショックを受けた顔を見せた。
「ごめん、なさい……。でも、また今まで通り、先輩と楽しくお話しさせて欲しいです……。駄目、ですか……?」
そう、恐る恐る申し出たヴィヴィに、先輩は何とか笑顔を見せてくれる。
「も、もちろん、嬉しいよ! そっか……、彼女になって貰えないのは残念だけど、僕はずっと君の事が好きだよ?」
「……――っ ありがとうございますっ」
彼の言葉に息を飲んだヴィヴィは、そう言って深く頭を下げた。
長い金色の髪が垂れ、苦しそうな表情を浮かべた、ヴィヴィの顔を覆い隠す。
(こんな、こんなヴィヴィなんか、好きになってくれて……)