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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
そこでその上級生と別れたヴィヴィは、紺色のローファーの先を見詰めながら、とぼとぼと歩いていた。
が、ぱっと顔を上げると、両手で頬をぺちりと叩き、図書館へと向かう。
本を借りるためでも、何かを調べるためでもない。
用事があるのは、その建物の裏手。
「あ、ヴィクトリア……。ごめんね、呼び出して……」
視線の先に緊張した面持ちで立ち尽くしていた、こちらも高等部3年の先輩に、ヴィヴィはゆるゆると頭を振ると、にこりと微笑んでみせた。
「いえ、お待たせしました、タカヤ先輩――」
今朝、登校したヴィヴィのロッカーには、20通ほどの手紙やメッセージカードが入っていた。
どれもこれも、男子生徒からもの。
ラブレターとして、ヴィヴィを好きな気持ちが丁寧にしたためてあるものから、メールアドレスが書いてあって、連絡が欲しいというもの。
こんな風に放課後やランチタイムに、話がしたいので会って欲しいというお誘い。
それらを目ざとく見つけたカレンは、取り立てて騒いだりはしなかったが、ヴィヴィの手を引っ張って教室の隅へと連れて行った。
「学園中で、噂になってる。双子が仲違いしてるって……。だから、今が千載一隅のチャンスと思って、みんなが告ってくるんだよ……」
「千載一隅の、チャンス……?」
ヴィヴィはどうして、クリスに無視されている今がチャンスなのか、分からずに首を傾げる。
「ヴィヴィ……まさか、知らなかったの……? 今までは、クリスがべったりくっ付いてたから、みんなヴィヴィにアプローチ出来なかっただけ。あんた、ものすっごくモテるんだよっ!?」
(…………はぁ…………?)
「……それは……いったい、誰の、ことかな……?
ヴィヴィ、産まれてこの方……、モテたことなんて、
ただの一度も無いんですけど……?」
カレンの説明にぽかんとしたヴィヴィは、まだ信じられず、そう確認する。
「だから、ヴィヴィの事に決まってるでしょう? 私、しょっちゅう、先輩や後輩にヴィヴィの事聞かれるもん。何が好き? とか、彼氏いるの? とか。 …………、お~い。現実逃避するな~~」
ぽけ~と虚空を見つめて、呆けているヴィヴィの耳たぶを、カレンが引っ張って現実に引き戻す。