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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第79章            

 3月17日(土)。

 ヴィヴィは早朝5時に目を覚ました。

 そして自分の斜め上に、整った兄の顔があることに驚いた。

「………………?」

 灰色の瞳が、ぱちぱちと音を立てて瞬かれる。

(あ……、そっか……。昨日、お兄ちゃんのお部屋に来て、えっちしたまま、寝て……。っていうか……)

 ヴィヴィはそこまで思い出し、小さく息を吐き出す。

(男の人って凄いなぁ……、睡眠中の3時間、そのままの状態って……)

 自分の躰の柔らかなところを深く貫いたまま、硬さを失わない剛直に、驚きを通り越し少し呆れた。

(いや、きっとお兄ちゃんが、絶○なんだ……。うん、きっと、そうだ……っ)

 男は匠海しか知らないのに、なぜか自信満々にそう心の中で言い切ったヴィヴィの表情が、呆れたものから徐々にふにゃりとしたものに変化する。

「でも、可愛いい、寝顔……♡」

 桃色に潤った唇から洩れたのは、途轍もなく甘ったるい声。

 さらさらの黒髪が滑らかな額を覆い、彫りの深いその下には黒々とした長い睫。

 高く美麗な鼻筋の下にあるのは、無防備に弛緩した柔らかそうな唇。

 その感触を確かめたくて、自分の唇を兄のそれに触れ合わせれば、帰ってきたのは張りのある感触と、きゅっと自分を引き寄せてくる兄の両腕。

 逞しい胸に抱きこまれたヴィヴィからは、兄の顔が見えなくなり少し残念に感じるがそれも少しの間だけで、やがて目の前の張りのある美しい肌に頬ずりする。

 しっとりとした表層、そしてその下の引き締まった筋肉。

 自分の小さな乳房も、匠海の腹筋に潰されて、触れ合っている。

(こんなにもぴったりと重なり合って、深く繋がってるのに、ね……)

 どれだけ互いの熱を共有しても、体液を交換しても、匠海と自分は常に平行線。

 その二人の距離が縮まったかと思えば、兄のほうが離れて行き。

 また縮まったと思っても、決してその先で交わることはない。

「………………」

(次にお兄ちゃんに会えるのは、8月にヴィヴィが渡英出来たとして、

 今から5ヶ月先……。

 それが無理だったら、9月に留学を終えたお兄ちゃんが帰国した、6ヶ月先……)


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