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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第86章               

 離された兄の唇を、名残惜しそうに視線で追いかけるヴィヴィに、匠海は苦笑しながらその頭を撫でる。

 そしてヴィヴィの右脚を掴んだ匠海は、それを自分の躰を跨ぐ様に左脚の方へと移動させた――もちろん、陰茎を抜く事無く。

 何故か左方向にくの字に横たえられてしまったヴィヴィは、その背後から兄がぐっと腰を寄せてきた事に気付いた。

「……んっ あ、だめぇ……っ」

「うん? 駄目か?」

 そう優しく確認しながらも、匠海は後ろから妹のナイトウェアをずり下げて肩を舐め上げる。

「ダメ……、もう、駄目だよ……」

「どうして?」

「明日、も、リンク……」

 正確にはもう今日なのだが、昨日まるで使い物にならなかった分、今日はしっかり滑り込みたい。

「知ってるよ。でも、エディンバラに移動してからだろう?」

 確かに匠海の言う通り、今日ロンドンを発ち、エディンバラに着いてからあちらのリンクにお世話になる――つまり、今日は夕方に滑ることになる。

 言外に「移動中に爆睡してれば、夕方のレッスンには支障ないだろう?」と言ってのけた匠海に、ヴィヴィはむっとする。

「……じゃ、次でお仕舞にして。お兄ちゃんも、一緒にイって……」

「う~ん。それはお前次第だな」

「え……?」

 咄嗟に小さな声で聞き返したヴィヴィに、匠海は目の前の小さな肩を撫で摩りながら答える。

「ヴィクトリアの中が気持ち良かったら、俺も早々にイくだろうからな?」

「……っ じゃあ、バスルーム、行こう? ね? ヴィヴィ、自分で動くから」

 どうにかして次を最後にして欲しいヴィヴィは、そう捨て身の作戦に打って出たが、

「それは駄目。今日はベッドでゆっくり抱きたいからね」

「……――っ」

(だから、何でそんなに我が儘で、何でも勝手に決めちゃうのっ!?)

 以前の匠海なら絶対にそんなことなかったのに、こんなに我が強くなかったのに。

 どこにこんな顔を隠し持っていたのか、本当に不思議でならない。

「腰、疲れないように、後ろからしようね? 怖くないよ。俺はここにいるから」

 絶句したヴィヴィが了承したものと受け止めたらしい匠海は、妹の耳の傍でそう宥める様に囁いた。

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