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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第17章
ヴィヴィは自分でFSを創るつもりでいるが、もしサロメをしていいと許しを得たらジャンナの振り付けで滑る気だった。
もしサロメをさせてもらえなかったら、当然ヴィヴィの創ったFSしか匠海に見せることができなくなる。
「いいよ。俺が見たいのは、ヴィヴィの創ったサロメだから」
意外な匠海の申し出に、ヴィヴィは大きな灰色の瞳を丸くして聞き返す。
「え? 私の振り付けでいいの?」
「当り前だろう? 『リンクでは鬼』のコーチに歯向かってまでヴィヴィがやりたいサロメなんだから。きっとヴィヴィが創った物が一番、お前の気持ちが入ってるだろう?」
「うん……」
なるほど、匠海の言い分はもっともだと思いヴィヴィは頷く。
そう気づいた瞬間、ヴィヴィは自分のFSを匠海に見てもらいたくてしょうがなくなった。
サロメのオペラを見たとき、ヴィヴィは自分を瞬時にサロメと重ね合わせて見ていた。
欲しくて欲しくて堪らないものが目の前にいて、もがいている自分と――。
(サロメはきっと、「今の私」と同じだから……。私はお兄ちゃんに「今の私」を見て欲しい――)
「ヴィヴィからも、お願いする……。お兄ちゃんに私の創ったサロメ、見て欲しい……」
意を決してそう匠海に伝えたヴィヴィに、匠海が微笑を深くした。
「じゃあ、せいぜい俺を『ヘロデ王』だと思って、必死に誘惑してよ?」
匠海はサロメの義理の父――好色で野蛮な王が自分であると例えて、挑戦的な瞳でヴィヴィを見上げてくる。
「えぇっ! お兄ちゃんが『ヘロデ王』~?」
ヴィヴィの中では匠海=サロメが恋に落ちた預言者ヨハナーンだったのだで、あまりのミスキャストに嫌そうな顔をする。
「だって使う曲『七つのヴェールの踊り』だろう? あれ、ヘロデ王の前で裸踊りする曲じゃないか?」