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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第17章
ヴィヴィは手元に書き留めていた編集の内容を説明する。
すると匠海は慣れた様子で機械を使って編集をし始めた。
ヴィヴィは使い方を学ぼうと必死に後ろからその手元を覗き込んでいたが、匠海の操作が早すぎてまったく付いていけなかった。
約五分後にはヴィヴィの言った通りに編集し終わった匠海を、ヴィヴィは尊敬の眼差しで見つめる。
「すっご~いっ!! お兄ちゃん、天才!!」
出来上がった音源を確認しながらヴィヴィは感激の声を上げる。
編集後の音源の時間は4:06でFPの時間である4分±10秒に何とか収まっていた。
「ねえねえ、この音源はどうやってCDに落とすの?」
ついつい末っ子根性丸出しでそこまで甘えようとしたヴィヴィだったが、匠海に「教えてあげない」と遮られてしまった。
「うぇっ!?」
まさかこんなところで放り投げられるとは露(つゆ)ほども思わず、ヴィヴィは間抜けな声を出してしまった。
そんなヴィヴィを匠海は椅子の上で優雅に長い脚を組み替えながら、肘置きに両肘を置いて見上げてくる。
その瞳には何かしらを企んでいる色が見え隠れしている。
「な、なんで?」
「何でもかんでも周りがしてくれると思ったら大間違いだよ、ヴィヴィ。世の中は常に GIVE AND TAKE で成り立っているんだからね」
そう思わせぶりなことを言って悪そうに微笑んだ匠海の表情は生き生きとしていた。
そんな匠海にヴィヴィの胸がムズムズとしてくる。
それでなくても匠海は綺麗な顔をしているのだ。
これ以上ヴィヴィを虜にするような表情を見せつけるのはやめてほしい――心臓に悪い。
「ヴィ……ヴィヴィは、何をGIVEすればいいの?」
自分が匠海にしてあげられることなんて何かあっただろうかと、ヴィヴィは声が上ずりそうになるのを必死で堪えながら首を捻る。
「サロメが完成したら、俺に一番に見せること――」
そう言って椅子にふんぞり返った匠海にヴィヴィは一瞬つまり、やがて「えぇっ!?」と叫んだ。
「だってヴィヴィがそこまでして演じたいサロメなんだろ? すごく興味ある」
「え……あ、でも、振付師のジャンナには振付けてもらえないかもしれないよ? サロメはお蔵入りになるかもしれないし……」