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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第18章                   

 深夜十二時のリンクに『七つのヴェールの踊り』が流れている。

 シーズンオフの四月後半のリンクにはヴィヴィともう一人以外、誰もいない。

 オーボエの官能的な一節に合わせ、考え抜いた振付を氷の上で試してみる。

 外八文字(そとはちもんじ)と呼ばれる花魁道中(おいらんどうちゅう)で太夫(だゆう)が練り歩く所作を意識して組み込んだ、このサロメの核となる振付――。

 揃えた両足の片方を外を回って足が地面にハの字で描かれる。

 本来の外八文字は高下駄を履いてその底を引きずるようにするのだが、ヴィヴィは腰を深く落としてエッジを円を描いて、片方ずつ大きく外へ滑らせる。

 その後優雅に足を踏み出すと徐々にスピードを上げて、トリプルルッツ、トリプルサルコウ+ダブルループ+ダブルループの三連続ジャンプ。

 さすがにいつもの練習後にそんなジャンプを跳べるはずもなく、ヴィヴィは飛んだつもりでシングルジャンプをしていく。

 しかしそのスケートはすぐに止まった。

(やっぱり、床の上で振付けても氷の上じゃその通りにはいかない……)

 しばらく膝に両手を付いて考え込んでいたヴィヴィだったが、顔を上げると音楽を頭から流そうとリンク脇へと滑っていく。

「大丈夫ですか?」

 心配げに掛けられた声のした方向に、ヴィヴィは顔を向けると苦笑した。

「体力的には全然……。ただ、考えてた振付を変えなくちゃ駄目みたい……」

 視線の先に漆黒のロングコートを纏って立っている朝比奈に本音を漏らすと、ヴィヴィはCDの再生ボタンを押してまたリンクへと出ていく。

 始めのポーズを取りティンパニの激しい打音と共に瞼を開く。

 顔の前に翳(かざ)していた左手をゆっくりと引くと、なるべく妖しく見えるように微笑み腰を前後左右に動かすヒップサークルを挟んで滑り出す。

 上半身の振り付けを入れながら速度を上げると、曲の盛り上がりと同じタイミングでトリプルアクセルを飛ぶ。

(本当はこの部分に外八文字の動きを入れたかったけれど……)

 オーボエとフルートの艶(あで)やかな調べに乗りながら繋ぎのステップを入れトップスピードに乗り、トリプルアクセルとトリプルトゥーループを飛ぶふりをする。

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