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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章               

 BSTの講堂に響くのは、ハードシューズの靴底が床を踏み鳴らす硬い音。

 そして、ステップのカウントを取るカレンの声。

「5,6,7,8……hop(膝を上げて片足で立つ)、2、3、4、5、6、7、up(片足を前に上げる)、1、2、3、and1、2、3、and1、2、3、4、5、6、7、up1、2、3、and1、2、3、and1、2、3、4、5、6、7、and1、2、3、4、5、6、7、and、jump、up、closs、and、jump、up、closs、……OK~」

 曲を流す前にカウントで踊ってみせたクラスメイト達に、女子のダンスリーダーのカレンが個々にテキパキと注意点を伝えていく。

「ジェシカ、そこのオフビートはStamp(足全体を使って床を踏む)じゃなくてStomp(足全体を使って床を叩く)だね~」

「あ、そっか~」

 ジェシカがそのステップを繰り返す傍で、男子のダンスリーダーのアレックスも注意を促す。

「ジェイソンも、……1、2、3、and2、2、3、and、Spank、up、Stampだね……Brush、up、Stampじゃなくて」

「え、えっと……?」

 自信なさそうに苦笑いしたジェイソンに、アレックスも笑いながら両者の違いを説明する。

「Spankはボール(つま先辺り)の部分で床を蹴って、こう、膝が曲がるだろう? Brushは膝が伸びてる」

「こうして、こう?」

「そうそう」

 皆が先程の通しを反復し、講堂のステージは途端に賑やかになった。

 学園祭まで2週間に迫っていた。

 学園生活最後のお祭りとなる3年生は、今日は講堂を使ってリバーダンスの全体練習だった。

「ヴィヴィ、マイク。通してみるから確認してくれる?」

 カレンが振付・構成担当の二人のそう指示を仰げば、「「了解~!」」とヴィヴィとマイクが舞台から飛び降りる。

「じゃあ、まずアレックスのソロから」

 マイクの指示に、アレックスが「ウィっす」と舞台裏から大きな返事を寄越す。

 バウロン(アイルランドのドラム)の音がBGMとして流れる中、アレックスが舞台袖から現れ、見事なステップを響かせて聴衆を聴かせる。

 本番では暗転していて、彼にだけスポットライトが当たっている状態だ。

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