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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章
「で、アレックスが、暗転している中に並んでいる皆の前まで移動して、全体でCross-key(ジャンプから足を交差して着地)」
ヴィヴィのその指示に、総勢20名でその場で同時に床を踏み鳴らす。
「ヴィヴィ、ちょっと待って……」
総監督のクリスの声に、舞台にへばり付いて皆を見上げていたヴィヴィが後ろを振り向く。
「ん?」
「そこのCross-key……。同時にじゃなくて、1列ずつ微妙にずらしてみない……?」
客席中央で両腕を胸の前で組んだクリスが、思案顔でそう尋ねてくる。
「うん。じゃあ、1列目が飛び上った直後、2列目が飛んで、3列目も順次それで飛んでみてくれるかな?」
ヴィヴィがそう言ってカウントすると、皆が言われた通りにCross-keyというアイリッシュダンス独特のステップを踏み鳴らす。
「あ、いいっ! すっごくいいっ」
ヴィヴィが感嘆の声を上げると、隣のマイクも頷く。
「なあ! 人数少ないのに、凄く音に厚みが出て、迫力が増すな~っ」
「クリスやる~っ!」
皆に冷やかされながら、その先の振り付けも確認していく。
「姿勢気を付けろ~っ もうめちゃくちゃ胸張って!」とマイクが。
「前進する時、横の人見て。列真っ直ぐにして~っ」とヴィヴィが。
注意されながらも進むダンスは、3列の状態から2列へ、そこから1列へ、後方から前方へとステップを踏み鳴らしながら移動し、横1列となる。
そこで皆のステップと華麗な足技を披露してから、音楽が流れる。
「ラインダンス、足の高さ、揃えて~っ」
男子も女子も一列になって足を前に振り上げるので、皆高さがバラバラだった。
「あ~、これ、集中特訓が必要……」
ヴィヴィはそう呟く中、左端から右へと一人ずつ片足ずつ打ち鳴らし、顔は右を向いていく。
ウェーブのように見えて美しいその振り付けは、ラインダンスを挟んで右端から左へとまた繰り返される。
そしていつの間にやら舞台に上がって皆と合流していたクリスと、カレンが両端から中央へと出て男女のソロを踊る。
「カレンのLeap(弧を描く様な跳躍)、すっごく綺麗っ」
ヴィヴィが瞳を輝かす目の前で、2人が両手を繋ぎながらぐるぐると廻り、遠心力に逆らってステップを踏む。