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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章
「ヴィクトリア……。濡れちゃったな?」
ふっという笑い声と共にそう指摘してきた兄に、ヴィヴィはあまりの羞恥に金色の頭を振る。
「い、言っちゃ、やっ」
兄の長い両腕が自分に伸びて来て、軽々と持ち上げられた。
そして下されたのは、もちろん匠海の股の間。
横抱きにされたヴィヴィは、恥ずかしそうに兄の顔を覗き込んだ。
「可愛いな……。お前は本当に目が離せなくて、ずっと見ていたい」
心底愛おしそうに瞳を細めて自分を覗き込んでくる兄に、ヴィヴィの心が震えた。
「お兄ちゃん……」
「今日実は、会社に行く前に、リンクに寄ったんだ」
妹の髪の毛を指で櫛づけながらそう告白した匠海に、ヴィヴィは驚きの声を上げる。
「え、そうだったの? 声掛けてくれれば、よかったのに」
「あ~、関係者が沢山いて、何か込み入ってるようだったしな……」
「あ……。今日、最後の衣装合わせだったの。実際に着用して不具合がないか、最終調整してたから」
衣装の関係者と、スケ連の関係者も別件で来ていたので、兄も話しかけるのを遠慮したのだろう。
「SPの衣装、シンプルで凄く似合ってたよ」
最愛の兄からのその嬉しい評価に、ヴィヴィの小さな顔にぱあと明るい表情が広がる。
「ほ、本当? 嬉しいっ」
「俺の演奏に乗せて滑ってるヴィクトリアが、とても綺麗で……。ちょっと焦った……」
更に嬉しい事を言ってくれながらも苦笑した匠海に、ヴィヴィは首を傾ける。
「……焦った?」
(何に……?)
「こんなに可愛くて綺麗なお前を、誰かにかっさわれるんじゃないかって」
匠海のその言葉に、ヴィヴィはぽかんとした直後、吹き出した。
「まっさかぁ~? ヴィヴィみたいな『お子ちゃま』、だあれも相手にしないって~」
「お前は本当に自分の事になると、よく分かってないんだな……。氷の上のヴィクトリアは、本当に綺麗だった。今すぐ屋敷に連れて戻って、隅から隅まで可愛がりたくなるほど、な」
妹をべた褒めしながらも最終的にはエロに持っていく兄に、ヴィヴィは恥ずかしそうに突っ込む。
「……え、えっち……」
そんなヴィヴィに笑った匠海は、ゆっくりと顔を寄せ、その薄い唇を柔らかく啄ばんだ。