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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章            

 ヴィヴィの灰色の瞳が、途端に兄の股間に釘付けになる。

 肌色をほんのり赤くした匠海のそこは、腹に触れそうなほど立ち上がっており。

 恐るおそる両手を伸ばしたヴィヴィの心臓は、久しぶりに触れる兄自身にどくどくと早鐘を打ち始めた。

 指先で少し触れただけで、兄のそれはびくりと震え。

 そっと両手で撫でるだけで、微かに浮き出ていた血管が、ぐっとその太さを増す。

「……っ お、おにいちゃん……っ」

「ん?」

 上目使いに見上げるヴィヴィは、恥ずかしそうに言い淀む。

「……過、ぎ……っ」

「え?」

「……おっき、すぎるぅ……っ」

 そう困った様に呟きながらも、ヴィヴィの両手は休む事無く、その独特の触り心地に夢中になっていた。

(スベスベしてるのに……、硬くて……、ふ、太いのっ)

「そうか? いつもと変わらないけど?」

 ヴィヴィの金色の頭を優しく撫でてくれる匠海に、

「……ちゅー、しても、いい……?」

 そうお伺いを立てたヴィヴィだったが、兄の返事は意外なものだった。

「駄目」

「……どうしてぇ……?」

 ヴィヴィは泣き出しそうな声でそう零し、必死に兄を見上げる。

 昨年末、ドイツで行われたグランプリ・ファイナル。
 
 留学先の英国から観戦に来てくれた匠海は、ホテルに押し掛けたヴィヴィを抱いてはくれたが、

『お兄ちゃん……。ヴィヴィ、舐めたい……』

 そう懇願した妹を、

『まだだ。まだ、お前にはやらない……。

 まだ、お前には早いよ、ヴィクトリア……』
 
 兄はそんな言葉で切り捨てた。

 今なら解かる。

 匠海は全く未来を見据えていないヴィヴィに、自分自身を愛するのはまだ早い、その資格は無いと言ったのだろう。

 けれど、今、自分達は両想いの恋人になった筈。

(なんで……? どうして、駄目なの……?)

 当然「いいよ」と言われ、逆に喜ばれると思って発した言葉に「駄目」と返され、哀しくて。 

 目頭がじんと熱く感じた時、

「受験が終わったら、な」

 そんな言葉と共に柔らかく微笑まれ、ヴィヴィの零れそうになった涙が止まった。

「受験……? な、なんで……?」

「うん、だってヴィクトリア、エッチだから」

 その匠海の返答に、ヴィヴィの涙は完全に引っ込んだ。

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