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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章            

 というか、イラついた。

「……~~っ!?」

(はいぃ~~っ!?)

 さすがに両手の動きを止めたヴィヴィに、匠海はにやりと嗤って寄越す。

「お前は見かけに寄らずに、エロい子だからね。今ここでフェラ覚えたら、その事しか考えられなくなって、きっと受験に集中出来ないだろう?」

(んな゛……っっ!)

 心の中で絶句したヴィヴィは、大きな瞳をきっと眇めて兄を睨み上げる。

「~~っ!? ヴィヴィ、そんなにエロくも馬鹿でもないもんっ!!」

 そう反論しながらも、その細い両手の中には匠海の昂ぶりがしっかりとあって。

「じゃあ、もう止めるか?」

「え……?」

 予想の斜め上を行く兄の言葉に、ヴィヴィは聞き間違えたかとそう短く発したが、

「エロくないなら、もう終わってもいいよな?」

「……っ やだぁ~~っ」 

 自分を見下ろしながらそうきっぱり言葉にした匠海に、ヴィヴィは息を呑んだ後、幼児の様なむずがった声を上げた。

 その瞳が切ないものからどんどん哀しいものへと、色を変えていく。

(なんで、そんな事言うの……?

 ヴィヴィだけ、なの?

 この2週間、お兄ちゃんとひとつになりたくて、

 ずっと我慢してたのは、自分だけ、だったの……?)

「ほら、やっぱりエロい」

 妹の変化に気付かないのか、そう意地悪な事を囁いてくる匠海から、ヴィヴィはゆっくりと両手を離し、視線を落とした。

「……きらい……」

「え?」

「……おにいちゃん、きらいっ」

 そう掠れた声で叫んだ直後、ヴィヴィの咽喉が持て余した感情からぐっと塞がり、苦しそうに薄い唇が引き結ばれる。

 いつも、心のどこかで思っている事がある。

 やっと心が通じ合って恋人になれたのに、2人の年齢は6歳も離れていて。

 高校3年生の17歳の自分と、大学に上がってから社会人として働き始めた23歳の兄。

 それでなくてもその差は埋められないほど歴然としているのに、自分は年齢以上に幼くて。 

 そしていつも、この恋に必死なのは自分。

 匠海も必死かも知れないけれど、やはりどこか余裕なのだ。

 だからいつも、思ってしまう。

 大人の兄に抱かれる、どこからどう見ても少女の自分は、第三者から見てどれほど滑稽に映るのだろうと――。

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