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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第4章
普段の匠海は、ヴィヴィがいくら我が儘を言って甘えても、そんな頭ごなしに怒ることはなかった。
ちゃんと駄目な理由を説明して、叱られるのが常だった。
だからヴィヴィは余計に、匠海が自分を拒絶する意味が分からず、悲しくなる。
もしかして、兄は自分のことを、嫌いになってしまったのだろうか――と。
「むぅ~……、どうして、そんなに怒るの……?」
「どうしてって……、そんな事、考えれば分かるだろう?」
ようやく絞り出したヴィヴィの問いにも、匠海は明確な返事を返してくれない。
「……分かんない。ヴィヴィはただ、お兄ちゃんと一緒に、いたかっただけだもん……」
拗ねた様に小声で、もごもごと言い募るヴィヴィ。
匠海の拒絶に必死に抗うその瞳には、純粋に慕っている兄への愛しさだけが浮かんでいた。
妹のあまりの無防備さに、匠海はまるで自分の方が、悪い事をしているような気にさえなる。
真っ直ぐな瞳に下から縋り付くように見上げられ、匠海は居たたまれなくなって目を逸らした。
しかしそれも一瞬で――、
「まさか――、クリスとも一緒に、寝たりしてるのかっ?」
嫌な事に気づいてしまったという表情で、兄が妹に詰め寄る。
何でそんな事を気にして、心配するのか一向に分からないヴィヴィは、困惑の表情のまま首を振った。
「……寝てないよ。だってクリスとはいつも、朝から晩まで一緒にいるから……」
(それにクリスはいつも、練習終わって帰って来るとぐったりしてるから、1人で休ませてあげたいもの……)
匠海だって、大学と後継者教育の両立でいつも疲れているのだが、ヴィヴィはそこはあえて考えない。
それこそ、ヴィヴィが末っ子で、我が儘であることの表れだ。
妹の返事に深い嘆息を零した匠海は、ゆっくりと噛み砕くように説得を始めた。
「いいか、ヴィヴィ――。俺達は兄妹だけれど、男と女だろう? 一緒に寝てても、何もある筈がないけれど、使用人達や外部の者が知ったら、変に勘ぐる輩も出てくると思わないか?」
「……何を、勘ぐるの?」
「え……、そんなこと言わなくても、もうヴィヴィも14歳なんだから、分かるだろう?」
答え辛そうにはぐらかす匠海に、ヴィヴィは心底当惑する。
(…………? 本当に分からないんだけど?)