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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第4章     

 翌朝。

 目覚ましがなくても、早朝5時に目が覚めたヴィヴィは、まだ匠海の抱き枕にされたままだった。

 その腕の中は今までいたどの場所よりも居心地がよく、ずっとこうしていたかったが、

 さすがにスケートの練習に行かなければならない。

 ヴィヴィはもぞもぞと身じろぎし、両手で兄の広い背中をポンポンと優しく叩くが。

 匠海はまだ寝たりないのか「もう、ちょっと……」と呟き、妹の髪に顔を埋めてくる。

 確かにせっかくの日曜日の、しかも匠海にとってはまだ早朝ともいえる時間――。

「うん、ヴィヴィだけ起きるから……」

 兄にもっと寝ていてほしくて、小さくそう囁きながら広い背中をさすった時――、

「…………ぅ、ん…………?」

 疑問を含んだ唸りを上げた匠海が、腕の拘束を緩め、ヴィヴィの顔を覗き込んできた。

 その目蓋はまだ、半開きだ。

「おはよ、お兄ちゃん」

 ヴィヴィは無邪気にそう言って微笑んだが、その妹を見つめていた灰色の瞳は、徐々に見開かれていく。

 そしてその瞳がようやく焦点を合わせ、抱きしめている相手が妹だと察すした途端――絶句した。

「な゛っ…………!?」

 匠海の整った顔がちょっと間抜けに見えるほど、驚きの表情を浮かべていて。

「な……? って、なあに?」

 寝ころんだまま不思議そうに、隣の匠海を見上げるヴィヴィだったが、

 次の瞬間、身体を素早く起こした匠海に、両手首を掴まれ、仰向けにベッドに押さえつけられた。

「こ……っ、ここで何してるんだ、ヴィヴィっ!?」

「え……、お兄ちゃんと一緒に、寝てる……? っていうか、寝てた?」

 質問の意図が読めず、ヴィヴィは当たり前の状況を説明してみる。

「――――っ 馬鹿!!」

 いきなり意味も分からず怒鳴られた妹は「へ?」と間抜けな声を発した。

「前に言ったよな? もう俺とは一緒のベッドに入っちゃ、駄目だって!」

 凄い剣幕で上から威圧してくる匠海に、ヴィヴィは驚いた。

 確かに半年前「もう兄離れしなさい」と窘められた時に「ベッドにも潜り込んじゃ駄目」と言われてはいた。

 いたけれども――、

「ヴィヴィ、あの時『うん』って言わなかったもの」

 そう揚げ足取りな返事をし、悪戯っぽく舌を出したヴィヴィは、

 「四の五の言うんじゃない!」と一喝されてしまった。

 
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