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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「うん。ほら、ヴィヴィは僕を信じて、付いて来てくれるんでしょう――?」
クリスのその言葉に、ヴィヴィははっと我に返る。
そうだ。
この1年半、模試の結果等ふるわない自分を、クリスは何度もその言葉で鼓舞し続けてくれたではないか。
『僕を信じて、付いてらっしゃい……』
クリスだから言えるその台詞。
ずっとずっと片時も離れずに傍に居て、一緒に勉強してきたクリスだけが発せられる言葉だ。
それは匠海でも有り得ない。
双子の兄のクリスだけが、ヴィヴィを導けるその言葉。
「……――っ うんっ!」
目頭がじわりと熱く感じ、ヴィヴィは咄嗟に目の前に座るクリスの胸に飛び込んだ。
(信じるっ ヴィヴィ、クリスの言う事だったら、何でも信じる――っ)
予備校の模試が3回/月もあった模試地獄――魔の6月と9月を何とか乗り越えられたのも、クリスの支えがあったから。
『一人で泣かれるの、嫌なんだ……。
僕でよければ、胸、貸すから……』
『辛かったり、挫けそうになったら、
愚痴もいっぱい聞く……』
そんな優しい言葉で、ヴィヴィの不安を払拭してくれたのは、紛れもない目の前のクリスだ。
「ふぇえ~~んっ」
今までの事を思い出してのクリスへの感謝の念と、やはりまだ心の中で燻っているセンターの結果に対する不安で、ヴィヴィの灰色の瞳からは、耐えられなくなった涙がぼろぼろと零れ落ちた。
「うん、ヴィヴィ……。もうちょっとだから、頑張ろうね……?」
そう耳元で優しく囁きながら背中を撫でてあやしてくれる双子の兄に、ヴィヴィはこくこくと頷き。
ようやく泣き止んだ妹に、クリスが確認する。
「ヴィヴィ? 信じる者は――?」
「救われる~~(-人-)」
両手を合唱してそう唱えたヴィヴィに、クリスは至極満足そうに頷いたのだった。