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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「お前が小さい頃、よく俺の膝の上で、教科書を音読してたんだぞ?」
躰の横に放り出していたヴィヴィの細い両腕を掴んだ匠海は、まるでそれを再現するかの様に、胸の前で本を開く真似をさせる。
「お、覚えてるよ?」
教科書どころじゃない。
生まれた時からお兄ちゃん子だったヴィヴィは、兄の膝の上で人形遊びをし、絵本を読んで貰い、初等部に上がってからも甘えてその膝の上で教科書を読んでいた。
(読み方や発音が分からないと、お兄ちゃんが教えてくれて……。音読で突っかえると、くすぐられたりしたな……)
自分のより常に大きい匠海の掌が後ろから伸びて来て、頭を撫でてくれたり、お腹をこそばしてきたり。
そして常に自分より背の高い匠海の胸は、凭れていると気持ち良くて、暖かくて眠くなったりして。
本当にごく稀に、両腕でぎゅっと後ろから抱き締めてくれた時は、これ以上無い程の幸せを子供ながらに感じていた。
「だから、今も、俺の膝の上で受験勉強して?」
まるで甘える様にそう言って、掴んでいた妹の両腕ごと後ろから抱き締めてくる匠海に、ヴィヴィの胸がとくりと高鳴る。
(お兄ちゃんのお膝の上で、受験勉強……っ!? そ、そんなの、ドキドキしちゃうし、ヴィヴィきっと、へ、変な事、考えちゃうもん……っ)
「ムリ、だよぉ……」
恥ずかしそうにそう呟くヴィヴィの顔を、匠海が後ろから覗き込んで来る。
「そう? 1問正解する度に、気持ち良くしてあげるよ?」
そう囁く匠海の灰色の瞳の奥に、隠しおおせていない悪戯な光を見付けたヴィヴィは、可愛い顔を泣きそうに歪めた。
「~~っ!? やだぁ……っ」
「何がだい?」
面白そうに先を促す匠海に、ヴィヴィはぽっと頬を染める。
「だって……」
「ん?」
言い淀むヴィヴィに対し、匠海はいつも通り余裕綽々で、何を言っても受け止めるよという懐の深さで、妹の視線を受け止めていて。
そしてそんな匠海に、長い睫毛を震わせながら、ヴィヴィが発したのは、
「だって……っ 正解しないと、き……気持ちよく、してくれないの……?」
そんな甘い睦言だった。