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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第25章
(きっとその時の私が、一番クリスの気持ちを分かってあげられただろうに……)
「クリス……」
言葉を失ってしまったヴィヴィだったが、それに続いたのは匠海だった。
「可愛いなあ……クリスは」
そう発した匠海は常ならば絶対しない行動を起こした――隣に座っていたクリスの首を後ろから羽交い絞めにして自分へと引き寄せたのだ。
いきなり抱き寄せられたクリスは「……え?」と小さく戸惑いの声を上げたが、その180cmを超える華奢な長身は、それよりも数cm長身の匠海の胸に後ろ向きに抱き込まれていた。首に腕を回したまま目の前の金色の頭を反対の手のひらで撫でなでし始めた匠海に、一瞬あっけにとられていたクリスはやがてされるままになりながらも、
「……や、めて……」
と小さな声で抵抗していた。
「ヴィヴィのスケートが飛躍的に成長したから――だから焦ったんだよな~。クリス?」
匠海は悪戯っぽくそうクリスをけしかけながら、髪を撫でる手を止めない。
「に、兄さん……!」
焦りの色を滲ませたクリスが、少しだけ表情を歪めて匠海の拘束から逃れようと体を捩るが、そこは大人の体格の匠海とまだまだ少年のクリスの体格では初めから勝負は目に見えていた。
やがてぐったりしたクリスは「好きにして」と言わんばかりに、匠海にされるがままになってしまった。そんな兄二人の微笑ましい(?) 姿を見て笑っていたヴィヴィだったが、こちらも隣の父グレゴリーに後ろから抱き寄せられる。
「クリスもヴィヴィも、二人とも可愛いよ。もちろん、匠海もな――私達の可愛い子供達だ……な、ジュリアン?」
母ジュリアンを振り返ってそう幸せそうに発した父に、ジュリアンも「ええ!」と合わせる。
何故か家族に後ろから抱きしめられてしまったクリスとヴィヴィはお互い視線を合わせると、それぞれ凭れ掛かった胸の中で「「はぁ~」」と魂の抜けそうなため息を漏らしたのだった。