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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第25章
翌日のFPでもトリプルアクセルを単独とコンビネーションジャンプで見事決めたヴィヴィは、SPの一位を守り抜きグランプリシリーズ初戦のスケートアメリカを、クリスと一緒に金メダルで飾った。
二位となったアメリカのグレイシー・シルバーと、三位となったロシアのエリザベータ・トクタミシェルと表彰式のために通路で待っていた。FPの衣装に身を包んだヴィヴィの胸は、今までにないくらいに高鳴っていた。
(やっと……やっとシニアの表彰台に上がれる……お兄ちゃん、喜んでくれるよね……?)
今まで数えきれないくらいノービスでもジュニアでも表彰台の真ん中に立ってきたが、やはりシニアの表彰台は重さが違いすぎる。世界有数の限られたスケーターにしか上ることを許されない場所。そしてその最高峰が来年に控えるオリンピックなのだ。
いけないとは思いつつも口元が緩んでしまう。スケート連盟の人達に、
「顔がまずいことになってるよ」
とからかわれて両手を頬に添えて表情を引き締めたヴィヴィの後ろを、一人の女子選手が通り過ぎた。
「Avez-vous acheté votre père une médaille d'or?」
ぼそりと零された呟きに、ヴィヴィはとっさに振り向く。
「え……?」
視線の先には全身を青い波模様のパンツウェアに身を包んだ金髪の選手が一人いた。ちらりとこちらを振り向いて蔑んだ眼差しを投げてよこし足早に去って行く女性。彼女が先ほどヴィヴィに囁いた人物なのだろう。
「………………」
(どうして……)
ヴィヴィの緩んでいた表情が徐々に暗く曇る。俯いてスケート靴をじっと見つめているヴィヴィの様子に気づいた連盟の人が「どうかした?」と気にかけてくれたが、ヴィヴィは小さく頭を振った。
「なんでも、ありません……」
そう答えると、照明がふっと暗くなった。メダルセレモニーが始まったらしい。ヴィヴィは係員にリンクへ出るようにと促され、二人のスケータに軽く会釈をしてから通路からリンクへと飛び出していった。
照明が落とされた中スポットライトがヴィヴィに当てられ、名前がコールされる。ヴィヴィはなんとが笑顔を顔に張り付かせて観衆の大歓声に応えながらゆっくりと氷の上を滑り、リンクに設置された表彰台の一番高いところへと昇った。