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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

「ん? 誰に?」

「お、お魚さん……」

 ヨスジフエダイにウメイロモドキ、マンタ、ブラックチップシャークがいたと思えば、いきなり1m超の大きなサメが群れる水槽に変わり。

 少々恐怖を覚えるヴィヴィにはお構いなしに、匠海が更に囁きかけてくる。 

「ふ……。直に触っていい?」

「……~~っ!? 絶対にダメっ」

 いつ水槽の中から外に吐き出されるか分からないのに、恐ろしい事を言ってくる匠海に、ヴィヴィは悲鳴に近い声で喚いて抵抗した。

 しばらくして水槽は終わり、また熱帯植物が生い茂る屋外へと繋がる。

 さすがに妹の乳房から手を退けた匠海は、それでも後ろからヴィヴィの耳の輪郭に触れたり、白い背中に浮き出た肩甲骨を辿っては、妹に甘い悲鳴を上げさせていた。

「ヴィクトリア、頭の形、良いよな」

「え……? そ、そう?」

 誰からもそんな事を言われた事が無くて、不思議そうにツインテールの頭を傾げたヴィヴィ。

「うん。丸っこくて、可愛いよ」

 後ろからじろじろと見られている視線を感じ、ヴィヴィは居た堪れなくて両手で頭を抱えた。

「……~~っ」

(あ、頭の形なんて、マニアックすぎるよぉ~~……っ)

 頭上からは強烈な直射日光と、昼になり40℃近くまで上がった気温に、ヴィヴィは徐々にのぼせていき。

 出発地点に戻って来た頃には、頬が赤くなっていた。

「あ……。ずるい……」

 聞き覚えのある声に視線を向ければ、プールサイドのクリスが不服そうに兄妹を見つめていた。

「あ、クリスも、乗る?」

 ヴィヴィがそう問えば、

「もちろん、乗る……。もう一周、行こう……?」

 浮き輪から降りたヴィヴィの腕を、双子の兄は掴んで来た。

「えっと……、さすがに今すぐは……。暑くてヴィヴィ、熱射病になりそう……」

 日焼け止めも塗り直さねば、酷く焼けてしまいそうで。

「じゃあ、ランチ食べたら、ね……?」

 そう甘えてくるクリスが可愛くて、ヴィヴィは満面の笑みで「うん」と頷いたのだった。

 そして、当たり前のように匠海が割って入ってくる。

「クリス、その後、俺とももう一周しような?」

「……え……?」

「しような?」

「…………う、うん」

 匠海の圧力に負けて、しぶしぶ頷いたクリスなのだった。

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