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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
8月14日(土) ドバイ滞在3日目。
クリスと同室の匠海に部屋を変わって貰ったヴィヴィは、本日も朝4時に起床し。
何とかかんとか双子の兄を揺り起こし、ドバイ・モールのリンクで練習した。
昨日、遊び疲れて早めに就寝したので、時差ボケも無く体調は万全だった。
昼前にホテルに戻り、「眠い……」というクリスを残し。
ヴィヴィは 伝説の大陸 “アトランティス” の世界が展示された「ロストチャンバー水族館」へ向かう事にした。
以前から興味のあった、海水魚をはじめとした魚達。
実際に飼い始めると、より海へ対する憧れが募っていた。
ベアトップワンピ & マキシ丈スカートの2WAYで使えるスカートと、黒のタンクトップに身を包んだヴィヴィは、スイートの玄関から出ようとしたところで、匠海とかち合った。
「ん……、あれ? お仕事?」
てっきりプールサイドに居るものと思っていた兄の姿に、ヴィヴィはそう尋ねる。
「ああ、メールチェックしてただけ。ダッドも今、書斎でしてるはず」
「そっか。ヴィヴィ、水族館に行くけど?」
「俺も行こう。たぶんその恰好じゃ、寒いぞ?」
ヴィヴィのタンクトップ姿を認めて忠告してくれた兄に断り、ウォーキング・クローゼットへと向かったヴィヴィは、漆黒のアバヤを手に取り頭から被った。
その姿で匠海の元へ戻り、一緒に玄関を出た。
「アバヤって、物凄く便利ってこと、分かった」
「そう?」
「うん。だって下に何着ててもいいんだよ? 最悪、何も着てなくても大丈夫なんだよ?」
(寝癖だって隠せるし、こうやって目から下も隠しちゃえば、ノーメイクでもいいんだもんね~)
ずぼら発言をする妹に苦笑した匠海は、すぐにやって来たエレベーターにヴィヴィを先に乗せた。
大きなエレベーターには兄妹しか居なくて。
結構なスピードで降りていく独特の浮遊感に、瞳を細めながら肝を冷やすヴィヴィ。
けれど次の瞬間、アバヤから覗いた灰色の瞳が、はっと大きく見開かれる。
やがてその瞳は少しずつ潤み始め、右掌に感じる大きくて暖かな感触に、丸みの残る頬が熱を持ち始める。