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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

「さあ、応援席には首位に立った羽生(はぶ)選手もいます、2位につけた宮平選手も、3位と健闘したペアの棚橋・藤堂組もいます。そして昨日現地入りした、個人戦に出場する宇野 昌麻選手。皆が固唾を呑んで見守る中、女子フリー、いよいよ始まります――」

 画面上には、リンクを後にしていく選手達が映し出されていた。






「2度目のオリンピック、篠宮選手のミュンヘン五輪が始まろうとしています。女子3名が滑って、現在の順位は

 1番:アンネ・パゴリラヤ(ロシア)

 2番:アナイス・ヴェンタン(フランス)

 3番:ガブリエル・ドールマン(カナダ)

 となっています」  

 進藤アナウンサーの説明の直後、会場には次の選手をコールするアナウンスが流れる。

『The next skater is Victoria Shinomiya, from JAPAN. ――Der nächste Eisläufer ist Victoria Shinomiya, von JAPAN』

 英語とドイツ語で己の名が呼ばれる中、ヴィヴィはジュリアンとクリスに、落ち着いた様子で頷いて見せいていた。

「持ち前の明るさで、日本チームをここまで盛り立ててきました。この3日間、仲間に声援を送り続けてきました。今度は力強い仲間の声援を背に、リンク中央へと向かいます。現在2位のアメリカとの差は1ポイント差。4年前の銅メダルよりも良い色のメダルを獲る為には、ここで抜いてしまいたい! 女子のフリーです」

 純白の氷に “München2022” と浮かび上がった、大会のシンボル。

 その上で跪いた白衣装のヴィヴィが、映し出される。

「篠宮 ヴィクトリア選手。曲はバレエ『ジゼル』より」

 フルートと弦楽器の物憂げな音色を、クラリネットが追い駆ける中。

 氷面に両膝を着いたヴィヴィは、左手に摘まんだマーガレットを、右手で花弁を引き千切る。

 歓びに煌めいていた灰色の瞳が、2枚目を摘まむ時には苦しそうに細められ、

 やがて大きくかぶりを振りながら、ゆらりと立ち上がる。
 
 追い駆けっこの様な緩やかな音色は、何故か狂気と紙一重に美し過ぎて。
 
 助走に乗るその表情も、心の内を表す不安気なもの。

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