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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

「篠宮選手の五輪連覇を懸けたドラマが、この団体戦から始まっていきます。八木沼さん、どの選手も注目の選手ですが、最終滑走のヴィヴィアン・リー(アメリカ)、注目の選手ですね?」

 進藤の問いに、八木沼が慎重な声で続ける。

「はい。今シーズンの国際大会で、篠宮選手に次ぐ戦績を残してきています。高精度の3回転ルッツ+3回転トウループのコンビネーションを得意としており、この団体戦のフリーで、リー選手がどのような演技をしてくるのか、そこも非常に注目ですね」

「特に2位のアメリカは3位の日本との差、たった1ポイント。篠宮選手が現地入りしてから、八木沼さんも公式練習等をご覧になったと思いますが、調子はいかがですか?」

 画面に再度映し出される、5ヶ国の順位とポイント数。

「はい。非常にうまく調整をして、こちらに入ってきたと思います。公式練習中もとても落ち着いていて、リラックスした表情も見せていました」

 リンク上では、ヴィヴィがジュリアンと何か言葉を交わしながら、頷いている様子が映し出されていた。

「これまでの2日間は、仲間に大きな声援を送っていました。いよいよこの大事な場面で、篠宮選手が登場してきました」

「あ、アクセル飛びますね……。3回転アクセル。非常に余裕をもって着氷出来ています」

 八木沼の評価通り、画面上のヴィヴィもほっとした表情を浮かべていた。

「本人も小さく頷いて、手応えを感じているようです。さて、ロシアも油断なりません。非常に選手層の厚いロシア女子は、3名の個人戦出場選手の中で、一番状態の良いパゴリラヤ選手を送り込んできました。ロシアと日本の差は4ポイント、そう離れていません」

 進藤の指摘に、八木沼も「どの国も気を抜けない厳しい戦いですね」と相槌を打つ。

「さあ、6分間練習が終了しました。改めてジュリアンコーチと頷きあった、篠宮選手です。団体戦・女子SPで2位を飾った宮平選手は「やはり6分間練習で、凄く緊張した」と言っていましが、篠宮選手はどうだったでしょうか?」

「はい、がちがちに固まっているという風には見えませんでした。適度な緊張はプラスにもなりますしね」

 八木沼の返事に、進藤の声がいよいよ興奮したように大きくなる。

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