この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「……――っ」

 自分の浅はかさに反吐が出る。

 それと同時に、兄の子を想う。

 その子は、望まれている子。

 皆にその誕生を心から請われ、産み落とされる子。

 だからその子だけは、自分の憎しみの対象にしてはならない。

 その子がいなかったら、匠海は結婚しなかったも知れないけれど。

 その子がいなかったら、自分は五輪であんな醜態を晒す事は無かったかも知れないけれど。

 その子がいなかったら、こんなに惨めな自分になることもなかったかも知れないけれど。

 けれど、その子を恨む事だけは絶対にしない。

 愛せないかも知れない。

 可愛がれないかも知れない。

 兄の愛情を一身に受ける様子に、嫉妬するかも知れない。

 でもきっと、自分はその子とは関わりを持つ事も、そう無いだろうから。



 何の罪もないその子供だけは、幸せに生まれてきて健やかに育って欲しい。

 かつての自分が、そうであったように――。






 翌日、3月26日(日)。

 早朝からのレッスンを終え、一時帰宅したヴィヴィ。

 私室の書斎に籠り、1人調べものに没頭すると、

 その後は防音室に移り、ひたすら楽器に触れていた。

「お嬢様、少し宜しいですか?」

 2時間ぶっ通し――まるで何かに憑り付かれた様にヴァイオリンを奏でる主に、朝比奈が切り出す。

「……あ、うん。なあに?」

 音楽の世界に逃げ込み、思考の闇からギリギリ逃れていたヴィヴィは、

 書類を手に立つ自分の執事に、まるで起き抜けの様に目を瞬かせて問う。

「お2人のバースデーパーティーの事ですが、2・3ご決断頂く事がございます」

 目の前、顎と肩で挟んでいたヴァイオリンを下した主が汗を滲ませている様子に、ハンカチを差し出しながら続ける朝比奈。

 毎年恒例となっている、篠宮3兄妹の誕生日を祝うそれ。

 今年からは匠海は遠慮するとの事で、5月1日(日)のクリスの誕生日に、双子のみで行う事になっていた。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ