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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 触らないで。

 ヴィヴィに触れないで。

 自分の指一本、髪の毛一本とて、もう匠海の物では無い。

 なのに目の前の男は、拒絶するその態度にさえ そそられるとでも言う様に、

 作り付けの棚に腕を付き、妹の進路を阻みながら耳元で呪詛を吐く。

「ヴィクトリア、愛している。俺が本当に欲しているのは、お前だけだよ」

「………………っ」

 思わず、手にしているスケート靴で殴ってやりたい衝動に駆られ、

 けれど、それをすんでのところで押し留める。
 
 代わりにバックで兄の胸板を押し退け、

 羽織る事の叶わなかった上着を拾い、クローゼットを出た。

「……――っ」

 逃げ出すようにリビングへ出た、その戸口のすぐ傍、

 直立不動で立ちつくちしていた朝比奈のその姿。
 
 絶句したヴィヴィは、すぐに視線を外すと足早に私室を後にした。







「あれ? 良い感じだったのに、また減っちゃったねえ……」

 柿田トレーナーのその声に、ヴィヴィも視線の先に表示された体重に困惑の表情を浮かべる。

「……ちゃんと、食べてるのに……」

 165cm 45kg。

 スケートをするにあたっての、自分の適正体重。

 五輪後、41kgまで落ちたそれは、

 一時期 持ち直したものの、また下降線を辿り始めていた。

「主治医は何ともないって言ってたんだよね?」

 ジュリアンから聞いて知っているのだろう。

 柿田トレーナーの確認に、首肯する。

『もしや、進行性の癌なんじゃ……っ!?』

 若者は新陣代謝が活発な為、癌細胞の増殖も速い。

 ただし、癌になると必ず体重が激減する――と言う訳では無い。

 抗がん剤の投与で食欲が落ち体重が減るのだが

 早とちりした母は速攻主治医の病院へと送り込み。

 ヴィヴィに片っ端から精密検査を受けさせた。

 もちろん結果はシロ。

 「嬢ちゃんは痩せ過ぎなだけで、他は全くもって健康だ!」と太鼓判を押される始末。

 両手を取られ、気付けば柿田がじいと細い両手の甲を見つめていた。

「だから、吐いてませんってば……」

 いわゆる “吐きダコ” が無いか確認しているトレーナーに、ヴィヴィは少々げんなりした表情で突っ込む。

 自分はどれだけ信用されてないのだろう。

 いや、日頃の行いを見れば、信用されないのも当然か。

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