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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
どうやら人懐っこい子らしいヴィヴィは、早々に林を遊び相手と認めたようで。
賑やかな2人から視線を戻した朝比奈は、もう一人の幼児の傍へと歩み寄った。
床に置いたスケッチブックに、一心不乱に向かうクリス。
その横に両膝を着き、朝比奈は「まずはご挨拶」と口を開いた。
「初めまして、クリス様。私は朝比奈と申します」
「………………」
妹と同じく細い金髪が映える小さな頭は、ピクリともしない。
「お絵かき、お好きなのですね?」
「………………」
せめてお顔だけでも拝見したいのだが、クレヨンを握った幼児は完璧に自分だけの世界に没頭しているらしい。
クレヨンの色を変える時の、持ち替える微かな音だけ。
とても静かな2人に比べ、林とヴィヴィは すっかり打ち解け、きゃあきゃあと賑やかだった。
「私にも妹がおりまして、それも2人も」
ふと口を付いて出た言葉。
しかし、目の前の小さな頭が微かに反応し。
(おや……)
話の取っ掛かりを掴んだ手応えに、朝比奈は更に続ける。
「2歳下と、5歳下。2人も女の子がいると、本当に賑やかですね」
今度は ひょこっと持ち上げられた金の頭。
やっと顔を見せてくれたクリスに、朝比奈は顔には出さず心の中で驚いた。
(これは、また……。二卵性双生児と聞かされていたのに、合わせ鏡のように そっくりですね……)
「クリス様のように、私の下の妹は小さな頃から絵を描く事が得意で。将来は「芸術家になる」と張り切っていますよ」
今や兄の事を「鈍」やら「ダッサ」やら、けちょんけちょんに言ってくれるが。
「昔は恥ずかしがり屋で可愛かったな……」と心の中で懐かしみつつ、
「あ、芸術家とは分かりますか?」
そう続けた朝比奈に、クリスは こくりと頷く。
「……ほん、と……?」
ようやく動いたサクランボの唇からは、妹とそっくりの愛らしい声が零れた。
「ええ。部屋に籠って ずっと絵を描いたり、大きな木を彫って色んな物を創っていますよ」
そして、数日 部屋に立て籠もるんですよ。