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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
「……ちょうこく……」
「難しい単語を知っていますね。はい、彫刻を始めると、ご飯も食べなくなり大変です」
「……ヴィヴィ、も……」
「お嬢様も、ですか?」
意外に思い尋ねれば、表情を表に出さないクリスは こくりと頷いた。
(彼女にも、夢中になって周りが見えなくなる……そんな物があるのだろうか?)
「では、お兄ちゃん同志、大変ですね?」
「……うん!」
初対面の相手と打ち解け、距離を縮める最速の手段は “同調”
ちらりと頭の隅で そう想ってしまった、大人な朝比奈とは対照的に、
目の前のクリスは ふっと瞳を細め、初めて表情らしい表情を見せてくれた。
(おや、お可愛らしい……)
「……おにいちゃん、は、たいへん……」
少しずつ、喋る言葉が長くなって。
微かだけれど心を開いてくれている幼児に、
朝比奈は “手段” や “採用面接” という事とは別に、嬉しさを覚え始めていた。
「ええ。本当に。でも、可愛いですよね、妹」
朝比奈の声に、また頷いたクリス。
ゆっくりと遠くの妹を振り返ると、
「……ヴィヴィ、かわいい……」
その小さな呟きでも充分に聴き取れた、双子の妹への親愛の情。
「……~~っ」
(いやもうっ そういう、クリス様が大層お可愛らしい……っ!)
何だか変な方向に萌え始めた朝比奈の気配を察知してか、はたまた ただ おままごとに飽きただけか。
「ヴィヴィも、お絵かきするの~~」
そう嬉しそうに発したヴィヴィは、林の前から ぱっと立ち上がると、こちらに向けて駆け出す。
しかし その背後。
「これでもか」と遊び散らかした おままごとセットを、片し始めた林の姿を認めた途端、
朝比奈は咄嗟にヴィヴィを止めてしまった。
「ヴィクトリア様。お絵かきを始める前に、先にする事がありますね?」
「することぉ~~?」
何を指摘されているのか見当も付かない様子のヴィヴィは、首だけでなく、
まるで7という数字を模す様に上半身をも傾け、疑問の声を上げていた。