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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
(これは食べて、大丈夫なのだろうか……? 明日の仕事……)
「みんなはね~「生チョコにする」って言ったの~。でもヴィヴィはね~、アレンジ効かせて焼きチョコにしたんだ♡」
流石、プロフェッショナルな執事。
微笑を張り付かせたまま凍り付く朝比奈の目の前、ぺったんこの胸を反らせたヴィヴィは、物凄く誇らしげだった。
「左様でございますか。焼きチョコ、美味しいですよね。焼きチョコ……」
(ああ……、きっと生チョコであったならば、美味しかった……というか食べられたでしょうに……orz)
「あ、そういえば、クリスは食べてくれた~?」
双子の兄へと矛先を変えたヴィヴィに、
「うん。もちろん……」
初等部6年で身長165cmのクリスは、何故か朝比奈に近寄りながら首肯した。
(た、食べたのですか、クリス様……。こ、これを……)
おそらく指で摘まんだだけで、手が煤で真っ黒になるであろう黒炭――もとい炭化したチョコ。
己の主が口にしたものを、従者たる自分が口にしないなど言語道断。
よしっ
こうなれば、クリス様と(たぶん旦那様も、匠海様も)運命共同体です!
そう決意を固めた朝比奈が、白手袋に包まれた手で小さなプラスチックケースを開いた瞬間、
お仕着せのスラックスの尻ポケットに、ストンと何かを落とされた感触を感じた。
ちらりと傍にいるクリスに視線を走らせると。
思わせぶりに目配せしてきた主に、執事はすぐにその意図を察知する。
(なるほど。そういうこと、ですか)
「では、お嬢様。有り難く頂戴致します。……うん、とても香ばしいですね(震)」
白手袋と唇、そして白い歯を真っ黒にしながら、バレンタインチョコを頬張る執事。
その胸中は、これから篠宮邸の男性陣が覚えるであろう心持ちと、強く強く共鳴しているのだった。
(胃薬、万歳――\(^o^)/)