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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
「これ、朝比奈の分!」
ポンとお仕着せの胸に押し付けられたのは、可愛らしいピンクの小箱。
「おや、何でしょう?」
「今日、バレンタインでしょ~? 女子は調理実習でチョコ作ったんだ~!」
「ああ、なるほど。それはそれは、ありがとうございます」
これまでのバレンタインでも、ヴィヴィからチョコを貰っていたが。
市販のものだったり、料理長が作ったものに飾り付けを手伝ったものだったり、で。
初めて “主自作のチョコを頂く栄誉” を授かった朝比奈は、心の底から喜んでいた。
あの、お嬢様が……。
あんなにお転婆で、悪戯っ子で、ガキ大将(?)だった、私のお嬢様が、
こんなチョコレートを自作出来るまでに、御成長あそばれたとは……。
(ノД`)ホロリ
チョコの小箱を胸に抱き、己の主の成長と、時の流れの速さに「感無量」と浸っていると。
何故かヴィヴィに腕を引かれ、隣のドローイングルーム(前室)へと連れて行かれる。
「すっごく上手に出来たと思うんだ♡ ねえ、食べて食べて~?」
得意気に促すヴィヴィに、在りし日の「3回転アクセル、飛べたの!」と胸を張っていた幼子の面影が重なり。
「勿論でございます。早速頂きましょうね」
世の中の幸福全てを独り占めしたかの様な、贅沢な微笑みを浮かべた朝比奈は、さっそくピンクのラッピングを解いた。
解いた、のだが――
「………………」
その中から現れたのは、透明なプラスチックケースに入れられた黒炭。
――にしか見えない代物だった。
年甲斐も無くウキウキしていた高揚感から一転、
まさかの事態に咄嗟に対処出来ず、思わず絶句する朝比奈。
こ、これは、チョコレート……なのか?
それとも、チョコクッキーなのか?
「ちょっと焦げちゃった、テヘ♡」というレベルで、済まされるとは思えない。
これは焦げた――というよりは、炭です、炭……。