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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第34章      

 ヴィヴィは午前中サブリンクでの練習を終えるとアイスハウスに戻り、母校BSTの好意で可能になったネット中継を結んでの授業を受けたりして時間を有効活用していた。

 授業を終えてカレン達とスカイプで雑談して回線を切った途端、スマートフォンにメールが届いた。何気なく開いたそれは匠海からのもので、

『膝の調子、大丈夫か?』

 と短い言葉ながら、ヴィヴィの体を心配するものだった。

『全くもって、大丈夫! 

 お兄ちゃんの「おまじない」のおかげかな?』

 ヴィヴィは速攻そう返事を返した。数分後、またスマートフォンが振動し、ヴィヴィは今度は瞬時にメールを開く。

『あんなので治るのなら、いくらだってしてあげるよ』

「……――っ!?」

 画面を見つめるヴィヴィの灰色の瞳が大きく見開かれた。左膝が匠海の唇の感触を思い出してふるりと震え、ヴィヴィの小さな顔が瞬時に真っ赤に染まる。

(『いくらだってしてあげる』って!? そ、そんなに一杯チュウされたら、ヴィ、ヴィヴィ、出血多量で死んじゃう~~っ!!)

 ヴィヴィはのぼせて本当に鼻血が出そうになり、とっさに高い鼻に両手を当てたのだった。

 その日の夜と翌日2月17日の夜、それぞれ行われたアイスダンスのSDとFD両方に応援に訪れたヴィヴィは、関係者席で男子シングルの3選手と一緒に観戦し、近況を報告したりしてリラックスすることができた。

「今日、三人で観光してきた!」

と嬉しそうに口にした火野龍樹にヴィヴィは、

「え~っ! 三人だけでずるい~っ! あ、だからクリス、今日の授業中継、受けてなかったんだ?」

と唇を尖らせる。

「まあまあ。だってヴィヴィは午前中、公式練習だったろ? ほらお土産あげるから、機嫌直して?」

 恨めしそうにクリス達を見つめるヴィヴィに、苦笑した羽生(はぶ)が土産を手渡してくれた。

「え? お土産買ってきてくれたの? 開けていい?」

 瞬時に機嫌を良くした現金なヴィヴィがぱっと表情を明るくし、受け取った紙袋を開く。

 中から現れたのは韓国布地を使ったスマートフォンフォルダーだった。紫と黄色、水色のカラフルな表には繊細な刺繍が施されている。そして長い紐が取り付けられた内部は、チマチョゴリ(韓国伝統服)の生地を使ったという裏地がついていた。

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