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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第43章           


 泣き過ぎたからだろうか。

 頭の中が、霞がかった様に朦朧とする。

 長い睫毛に縁どられたヴィヴィの瞼が、ゆっくりと持ち上がる。

 その奥の灰色の瞳は、先程までの色とは明らかに異なっていた。

 億劫そうに数度瞬きがなされた後、やがて心を決めたように大きく一つ瞬かれる。




『自分の思い通りに事が進まなくて、腹の虫が収まらない――そうだろう?』




 匠海の声が、頭の中に響く。

 そうだ、その通りだ。

 何故なら、自分は成すべきことを成した。
 
 だから欲するものを欲するままに手にする権利がある。
 
 もしそれが手に入らないならば、只、奪えばいい――。
 
 たったそれだけの事。




『一見我が儘なお嬢様にしか見えないのに、

 実のところは周りの期待を裏切って失望させるのを、極端に恐れている』




 ある日の兄の言葉が脳裏をよぎる。

 まるで狂い始めた自分に、正気に戻れとでもいう様に。

 確かに以前の自分は、そうだったかもしれない。

 けれど、私の禁忌の扉を強引にこじ開けたのは――匠海だ。




 そうだ。
 
 何故もっと早くに気付かなかったのだろう。
 
 手に入らないのならば、奪えばいい。
 
 そう、だから自分はずっと、

 望むものをその手にした『サロメ』に惹かれていたではないか――。

 






「お嬢様……。一体何処にいらっしゃったのです?」

 私室へと戻ったヴィヴィに、そこに控えていた朝比奈が問うてくる。

「…………?」

「もうリンクへと行くお時間は、とうに過ぎておられますよ」

 現在の時刻を確認することすら億劫で、ヴィヴィは緩慢に口を開く。

「クリス、は……?」

「クリス様は既にこちらをお出になられました。お嬢様はきっと疲れているのだろうと仰って」

「そう……」

 ヴィヴィはそう言うと、自分から聞いたにもかかわらず、興味なさそうにソファーに腰を下ろした。

「体調は大丈夫ですか?」

「問題、ないわ……」

「少し、宜しいでしょうか?」

「…………?」

 本当はすぐにでも退室して欲しかった。

 だが、主の気配を察知するのに秀でている朝比奈がそれでも食い下がることなのだから、ヴィヴィは視線だけを彼に向ける。

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