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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第51章
「……って、クリス……。それってもしかして、と、東大――っ!?」
アレックスがそう絶叫し、そして隣のカレンは絶句し、驚きで目を見開く。
「うん……」
何でもない事のようにそう認めてサンドウィッチを頬張るクリスに、ヴィヴィもどもりながら聞き直す。
「く、クリスったら、東大受けるの――!?」
同じ質問を繰り返すヴィヴィに、クリスはこくりと頷く。そのクリスの返事に、その場は蜂の巣を突いた状態になった。
「え~~っ!? 確かにクリス、めっちゃ勉強できるけどっ!」
「初等部からずっと、首席明け渡したことないし、ね?」
「で、でも! うちの学校から、今まで東大行った生徒なんて、いないんじゃ!?」
「あ、でも、ケンブリッジか、オクスフォードならいたぞ、確か」
皆が口々にそう騒ぎ立てる中、ヴィヴィは小さなおにぎりを手に、隣のクリスを見つめていた。そんなヴィヴィに気付いたクリスが、口を開く。
「ヴィヴィも、行こうよ……」
「へ……っ!?」
(ど、どこへ……?)
瞼をぱちぱちとさせるヴィヴィの口元へ指を伸ばしたクリスは、その唇の端に付いていた米粒を摘まむとぱくりと食べ、続けた。
「東大……。ヴィヴィと、一緒に、通いたい……」
「む、無理……っ!!」
あまりにも無謀な事を簡単に言ってのけるクリスに、ヴィヴィはそう言うと腰を引いて後ずさった。
「何で……? ヴィヴィだって、いつも僕と点数、変わらない……」
確かにクリスの言うとおり、いつも首席をキープしているのはクリスだが、2番はずっとヴィヴィだった。
「……――っ」
(ま、マジですかっ!?)
絶句し、頭の中が混乱し始めるヴィヴィを尻目に、その場にいたクラスメイト達は、
「この双子……っ。そんな簡単に『東大』行こうよっ、ていうか普通~っ!?」
「いや……。でも、この双子なら……なんかやりそう……」
「うん。私も、本当に双子で東大受かりそうな気がしてきた!」
そう口々に勝手なことを言って、徐々に盛り上がっていく友人達の声が、耳に入っているのかいないのか、クリスはただ静かにもぐもぐと、好物のスモークチキンサンドを咀嚼していた。