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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第52章       

「ク~リ~ス~……。ヴィヴィには無理だよぉ~……」

 BSTから帰宅後、何故かクリスの書斎で、ヴィヴィはそう半泣きの声を上げていた。

「無理、じゃない……」

 静かな声で、クリスがヴィヴィの弱気な発言を否定する。実は同じやり取りをもう5回は繰り返している双子を、リビングに控えていた朝比奈が苦笑しながら見守っている。

 立て板に水状態のクリスに、ヴィヴィはきっと鋭い目を向けた。

「あ、のねぇ~っ! 分かってる? 東大って、日本で一番偏差値高いんだよ!?」

 めったにクリスにこんな口を利かないヴィヴィが、珍しくそう畳み掛ける。しかし対するクリスは、飄々と言い返してきた。

「世界大学ランキングでは、27位、だけど……?」

「え……。そ、そうなの?」

 少しひるんだヴィヴィに、さらにクリスが現実を突きつける。

「うん。ちなみに、兄さんが行く、オックスフォード大学は、2位……」

「……~~っ」

(ひぇ~……。お兄ちゃんてば、どんだけ頭いいのさっ!?)

 ヴィヴィは面食らって、心の中で匠海に突っ込む。

「取り敢えず、申し込んでおいたから……」

「へ?」

「予備校の模擬試験……ネットで、受けられるから……」

 何でもない事のようにそう報告してくるクリスの腕を、ヴィヴィが思わず摑む。

「ちょ……っ、うそぉ~っ!? し、試験日っ、いつっ?」

「今週末……」

「えぇえええっ!?」

 何でもない事のようにそう答えたクリスに、ヴィヴィが文字通り絶叫する。

「ヴィヴィが今、受けてる通信講座って……『高2生・高等学校対応講座』……だよね?」

「う、うん……」

 双子が通っているBSTは英国のインターナショナルスクールなので、国語や歴史等の授業(全て日本の)がない。日本の大学に進学するつもりのヴィヴィは、その講座を使って自身でフォローしていたのだ。しかし、

(おぬし……、何故、知っておる?)

 ヴィヴィは何でか、時代劇のようにそう突っ込む。

「『高2生・東大特進コース』に、変更しておいたから……」

「はあ~っ!?」

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