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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第52章
「これが年間スケジュール表。ほぼ毎月、模擬試験あるからね。5・6月特別講座終わっちゃったから、次は夏季集中講座だね。7/13~8/20迄。次は9月にある、東大本番レベル模試対策が始まって――」
いつもの寡黙なクリスとは思えないほど、すらすらと淀みなくスケジュールを説明され、ヴィヴィは口を挟めず、ぱくぱくと薄い唇を開閉するばかり。
「………………」
(ク、クリスが、おかしくなっちゃった~……)
ヴィヴィは頭の中でそう呟く。
スケート以外でクリスがここまで我を通してくるのを、ヴィヴィは見たことがなかい。
しかも双子の両親は『学校の勉強は、平均点以上とってればOK』という教育方針なので、毎回それはクリアしているヴィヴィは、今まで誰かに『勉強しろ!』と言われたことは皆無に等しかった。
(あ……、お兄ちゃんには、言われたことあるか……)
しかしそれも、ヴィヴィのほうから『お兄ちゃん、勉強みて~!』とお願いしたにも拘らず、『やっぱ勉強やだ~! 遊んで』と我が儘放題だったから、『勉強しろ!』と突っ込まれただけだった。
(なのに、なんで今頃になって、しかも同い年のクリスに……?)
ヴィヴィは心の中で首を捻る。
「あのね、ヴィヴィ……。東大は日本一の大学……でしょ?」
「……う、うん」
その当たり前の事実は、ヴィヴィはどもりながらも認める。
「『東大特進コース』受けておけば、もし東大以外を受験しようとした時……、他の難関大学の受験も、余裕だと思わない……?」
「……ん~~?」
(そ、そういうもの……?)
ヴィヴィは予備校のシステムがよく分からず、そのクリスの説明に若干胡散臭そうに首をひねる。
「ということで、一緒に頑張ろう、ね……?」
「えぇ~……」
半ば強引にそう結論付けたクリスに、ヴィヴィはまだ納得がいかず、眉根を寄せて反論の声を上げる。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんの僕が、ちゃんと、スケジュール管理と、進捗管理、してあげるから……。ヴィヴィは、大船に乗った気持ちで、いればいいよ……」
「………………」
(う~ん……? なんか、有難迷惑のような気がしてきたのは、気のせいかな……?)
ヴィヴィは今までにないクリスの言動に当惑し、なんと返せばいいのか分からなくなってきた。