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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第58章
(キツイとか、締まるとかは、よく言われたけど……。そんなの、褒めてないし……)
「はぁ……」
考えれば考えるほど、匠海にとって自分は女として見られる要素が無いのだなと確信させられ、ヴィヴィは肩を竦めるとジャグジーから上がった。
火照った体にプールの水はさらに冷たく感じ、小さな悲鳴を上げながらもなんとか我慢してプールに入る。
「ヴィヴィ、引っ張って~!」
「引っ張って~!!」
声のしたほうを振り返ると、浮き輪を纏ったジムに掴まってふよふよ浮かんでいるサラが、自分達を引っ張れと手を振っていた。
「よ~し! 任せてっ!」
ヴィヴィはそう楽しそうな声を上げると、浮き輪の紐をむんずと掴んで大股で引っ張っていく。
「お~、楽ちん楽ちん!」
「ヴィヴィ、もっと早く~!」
姉弟の要求に応えるべく、ヴィヴィは数分頑張って引っ張り続けたがやがて疲れてしまい、サラに「交代しろ~!」と要求する。
「しょうがないなあ」
サラはそう言いながらも引く役を交代してくれ、ヴィヴィはジムの浮き輪に纏わりついて足を浮かせた。
「あはは、確かに楽ちん。気持ちいい~!」
「でしょ~?」
目の前のジムがきゃっきゃっとはしゃいでいるのが可愛くて、ヴィヴィはその頬にキスをする。
「サラ~! ヴィヴィにチューされた!」
「あら、良かったね! オリンピック女王の祝福のキスよ~」
サラがそう言ってジムにウインクする。
「ヴィヴィ、もう1回! 今度は、僕がオリンピックに出られますようにって、祈りながらチューしてね?」
「ふふ。えっとジムが、野球でオリンピックに出られますように! チュっ」
「ち~が~う~っ! サッカーだってば!」
ジムがムキになってそう言い募ってくるが、
「もうチュー、終わり~!」
とヴィヴィは舌を出した。
「えぇ~っ!?」
ジムが不服そうに唇を尖らせるのが可愛くて、ヴィヴィはもう一度キスしてあげた。
「ヴィヴィ、僕にも、キス……」
淡々とクロールをしていたクリスが、いつの間にかヴィヴィの隣に立っていた。
「クリスはいいの! そんなことしなくても、もうオリンピック自力で出れるでしょ!」
「ちぇ……」
「あはは、お馬鹿兄妹っ!」
拗ねてみせるクリスに、サラがそう言って破顔する。