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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第58章          

「プール、いいなあ。なんか、癒される~。明日も泳ごうかな……」

 ヴィヴィがそう呟くと、

「じゃあ、明日も泳ぐなら、誘ってね?」

とジムがくりくりの可愛らしい瞳で見上げてきたので、

「分かった」

とヴィヴィはその頭を撫でたのだった。





 エディンバラ滞在、4日目。

 スケートも勉強も楽器の練習も、全て予定通り終えたヴィヴィは、篠宮一家の滞在最終日の為に一族が集まってくれるディナーに備え、ワンピースに袖を通していた。

 鏡に映った自分を見つめる。

 紺地に白い水玉のベアトップワンピ。膝上の裾には大ぶりな白いレースが縫い付けられている。

(ベアトップって初めて着るんだけど……変じゃないよね……?)

 夏休み中、勉強に行き詰った時、クラスメイトと何度が外出する機会があった。

 その時にカレンとケイトが「ヴィヴィに絶対似合う!」と勧めてくれたのが、このワンピースだった。

 プラチナのピアスとネックレスを着けると、

「ま、こんなもんかな?」

と一人ごちて部屋を後にする。

 階下へと繋がる階段に差し掛かろうとしたとき、目の前に伸びる廊下の先から、一人の男性が出てきたのが視界に入る。

「お兄ちゃん……」

(お兄ちゃんも、部屋、3階だったんだ……)

 そうどうでもいい事を思いながら、近づいてくる匠海を見つめる。

 紺色のシャツにグレーのベストとパンツを纏った匠海は、肩にグレーのジャケットを掛けている。

 ヴィヴィがその姿に、目も心も奪われて立ち尽くす。

 9頭身の匠海はモデルとしても遜色ないくらい、完璧に何でも着こなしてしまう。

(なんでお兄ちゃんは、こんなに恰好いいんだろう……。ヴィヴィ、こんなだから、本当にお兄ちゃんと血繋がってるのかと、疑りたくなる……)

 もっとも実際にはちゃんと血が繋がっているので、ヴィヴィはこんなにも苦しんでいるのだが――。

「ヴィヴィ、それで行くのか?」

 ヴィヴィの1メートル程前で立ち止まった匠海は、ヴィヴィの全身を何故かじろじろと見ている。

「え……? う、うん……」

「外気温、10度だぞ……」

 匠海の指摘の意味が、咄嗟には分からない。

 屋敷のダイニングでのディナーの筈だし、室内は適温に保たれている。

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