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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第60章          

 10月27日(土)。

 早朝から始まった公式練習に参加した双子は、明暗がはっきりと分かれていた。

 クリスはいつも通り、全てにおいて絶好調。

 ヴィヴィはというと、3回転アクセルの成功率は4/6回。

「クリスは予定通りのエレメンツで! ヴィヴィは安全策で! 異論はあるかしら?」

 ジュリアンのその言葉に、双子は「「ありません」」と素直に頷いた。

(ああ……。これで優勝したとしても、また『篠宮妹、3回転アクセル不調!』って言われるんだろうな……)

 ヴィヴィはがくりと肩を落とし、でもランチは綺麗に平らげた。

 ジムで軽く汗を流したり、仮眠を取ったりして過ごしたヴィヴィは、15:25から始まる男子シングルFPの為に会場入りした。

(多分、クリスはもう、ヴィヴィがリンクサイドにいようがいまいが、調子変わんないと思うけど……)

 ヴィヴィは心の中でそう思うが、昨日のヴィヴィのSPのリンクサイドに立ってくれたクリスの存在に、自分が物凄く助けられたので、少しでも自分が役に立てればとも思う。

 FPの滑走順はSPの下位から滑走するため、SP1位のクリスは最終滑走だった。

「じゃあ、行ってきます……」

「はい、クリス、SMILE忘れない!」

 いつも通りのやり取りを交わしたクリスとジュリアンの横で、ヴィヴィはクリスが差し出してきた手をぎゅっと両手で握る。

「ヴィヴィ、上手く滑れたら、キス、してくれる……?」

「ふふっ 余裕だなぁ。考えとく~」

 本番直前にもかかわらずそんな軽口を叩くクリスに苦笑したヴィヴィは、そう言ってクリスを送り出した。

 結局周りの期待を微塵も裏切ることなく、クリスはぶっちぎりで優勝した。

 FP後の表彰式をバックヤードから見守っていたヴィヴィは、金色のメダルとブーケを手にバックヤードに戻ってきたクリスに、祝福のキスを送る。

「おめでとう、クリス!! っていうか、金メダル触らせて~っ! ヴィヴィにパワーを分けて~っ!!」

 必死の形相でそう主張してくるヴィヴィに、クリスは金メダルを握らせる。

「大丈夫。ヴィヴィ、ちゃんと頑張って、練習してきたんだから」

 クリスはそうヴィヴィを励ますと、金髪を綺麗に編み込みにした妹の頭を撫でる。

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