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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第2章  

 車はすぐにリンクに到着し、朝比奈に開錠して貰い中に入る。

 途端に冷気が頬を撫でる。

 その冷たさで頭がさらにクリアになり、2人はトレーニングルームでストレッチをすると、

 スケート靴を履き、氷の上に立った。

 6時前の朝一のリンクは製氷され、輝いている。

 ヴィヴィはこの綺麗なリンクに、自分の滑った軌跡が描かれるのが好きだった。

 ちょっとした優越感に浸りながら、一通りアップを済ますと、コーチから出されている課題をこなす。

(オープン・モホーク……、クローズド・モホーク……、スウィング・モホーク……)

 頭の中で両足の動きを確認しながらステップを踏むが、ついつい前傾姿勢になってしまう。

 これでは美しくない。

 さらにもっとエッジを深く倒さなければ、レベルを取れない。

 何度も何度も反復して、地味なステップの練習を重ねる。

 決して楽しくはないが、それしか上達の近道はありえない。

 時間を忘れて黙々と滑っていると、隣からジャッと氷の削れる音がした。

 音の方向を見ると、美しいランディングでジャンプを降りた、クリスの姿が目に入る。

 13歳で既に身長が180cm近いクリスのジャンプは、迫力がある。

 壁の時計を確認すると、終了時間が迫ってきていた。

 ヴィヴィは軽く膝を屈伸すると、ジャンプの練習を始めた。

 1時間半の朝練を終えシャワーを浴びると、リンクに併設されているカフェで、朝比奈が用意してくれていた朝食を食べ、双子は車で学校へと向かった。

「おっはよう! クリス、ヴィヴィ」

「テレビ見たよ~!」

 校門をくぐると同時に、同級生や上級生に英語で声を掛けられる。

 下級生達は遠巻きに双子を見つめ、何事か囁き合っていた。

 それぞれに朝の挨拶をしてクラスルームへと向かうと、そこでもクラスメイト達に昨日のテレビの事を言われた。

 ヴィヴィは紺色のダッフルコートを脱ぐと、白シャツ、紺地に赤色のラインが入ったタータンチェックのワンピースの制服姿で、自分の席に着席する。

 クリスもダッフルコートを脱いでロッカーに片づけると、ヴィヴィの前の席に座った。

 男子の制服は白シャツに、女子と同色のタータンチェックのネクタイとパンツ、紺色のセータもしくはトレーナーと、普段はカジュアルだ。

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