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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章        

「お兄ちゃん……っ ヴィヴィもっ」

(ヴィヴィも、お兄ちゃんに負けないくらい、ずっとこうしたかったよ……っ)

 そう幸せを噛み締めながら匠海に抱かれていると、少しずつ力の入らなかったヴィヴィの躰が復活してきた。

「悪い、俺も、すぐイくかも……」

 ふいにヴィヴィの耳元にそう囁いた匠海に、ヴィヴィは小さく首を傾げる。

「……え……?」

「酒が入ってるのもあるけれど……。ミュンヘン以降、やってないから」

「……――っ」

 匠海のその言葉に、ヴィヴィは息を飲んで、大きな瞳を見開いた。

(それって……、最近はヴィヴィ以外、抱いてないってこと……だよね……?

 うそぉ……っ! すっごく、すっごく嬉しい――っ!!)

 もしかしたら勉強と仕事が忙しすぎて、そんな気にもならず、そして時間も取れなかっただけなのかも知れない。

 けれど確かに今、ヴィヴィはたったそれだけの事に、死にそうなほど幸せを感じていた。

(ああ、この人は本当にたった一言で、

 ヴィヴィの身も心も捕まえて、離してくれない……っ)

 それでいいのかも知れない。

 いや、きっとそれでいいのだ。

 何故なら、自分の全て『匠海だけのもの』なのだから――。

 ヴィヴィは身を捩って、抱きしめてくれている匠海の顔を見上げる。

(お兄ちゃんが、久しぶりなら、尚更――)

「じゃあ、いっぱいちょうだい……? いっぱい、ヴィヴィの中でイって?」

 そう言って幸せそうに微笑んだヴィヴィに、匠海の灰色の瞳がふるりと震えた。

 気のせいか、ヴィヴィの中の匠海も、びくびくと震えた気がした。

「ヴィクトリア……。頼むから、俺以外の男に、そんなこと言うなよ?」

 何故か脱力した声でそう諭してくる匠海に、ヴィヴィは頬を膨らましてみせる。

「言う訳ないでしょう? だって、ヴィヴィ、死ぬまでお兄ちゃん以外としないもん♡」

 その可愛らしい返答に、匠海が今度こそがくりと躰を脱力させる。

「馬鹿……そう煽るなよ」

(だって、ホントだも~んっ)

 ヴィヴィは匠海の目の前ではにかみながら、心の中ではそう呟いた。

「じゃあ、ご希望通り、いっぱい俺のこと、受け止めてもらうよ?」

「うんっ」

 匠海のその恐ろしい言葉にも、ヴィヴィは嬉しそうに頷いた。

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