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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章        

「お酒の飲み方とか、お酒の席での振る舞いとか? ヴィヴィ、お兄ちゃんに教えてほしい」

 そう言って小さく首を傾けたヴィヴィを、匠海が面白そうに覗き込んでくる。

「ああ……。良い事も悪い事も、全て俺が教えてやるよ」

「うん……っ」

 匠海のその魅力的な誘い文句に、ヴィヴィは破顔した。

(ヴィヴィは全部、ぜ~んぶ、お兄ちゃんに教えてもらうのっ!

 そしたらヴィヴィ、お兄ちゃん好みの女性になれるかも……?

 うふふ、嬉しい~っ)

 ヴィヴィが匠海の首にぎゅっと縋り付き、兄妹の躰がぴったりと隙間なく合わさりあう。

「じゃあ、取りあえず今は、気持ちのいいセックスを、ヴィヴィの躰に覚えこましたいところなんだけど……、明日、何時から?」

 匠海はそんな誘い文句を言いながら、ヴィヴィの細い腰を大きな掌で撫で始める。

(き、気持ちのいいセックス……っ!?

 もう、いっぱい教えて貰ってるけど……、まだあるの……?)

 ヴィヴィは匠海に腰を撫でられる度に、びくびくと細腰を戦慄かせながらもなんとか答える。

「え、えっと……、エキシビの練習が、10時からかな……」

 ヴィヴィのその返事に、匠海がさり気なく続ける。

「俺、観に行くから」

「え……? 明日……? ほ、本当っ?」

 ヴィヴィが縋り付いていた両腕を緩め、驚いた表情で目の前の匠海の瞳を覗き込む。

「ああ、スーパーアリーナのチケット、取れなくて諦めてたんだけど、マムが関係者PASS取れたって」

 そう言って妹の顔の傍の髪を、指先で掻き上げた匠海に、ヴィヴィが瞳を細める。

「うそっ!? すっごく嬉しいっ。ヴィヴィ、超頑張るっ!」

(お兄ちゃん、今シーズンのヴィヴィのエキシビ、まだ生で見てくれた事ないから……っ 凄く嬉しいっ!!)

「ああ。生で見る『不思議の国のアリス』、楽しみにしてるよ。だから、もう一回、いいか?」

 匠海は何度もヴィヴィの金色の髪を櫛付ながら、そう尋ねてくる。

 エキシビを楽しみにしているから、もう一回やっていいか、と言うのは、話の筋として少々おかしい気がしたが、ヴィヴィは気にしなかった。

 ただ、心配事が一つだけあった。

「えっと……あ、後で、してくれるなら……」

「ん?」

 恥ずかしそうに言葉を濁すヴィヴィに、匠海が不思議そうに相槌を返す。

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