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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第13章
2017年、元日。
篠宮邸のダイニングルームには日本のお正月には欠かせない箏曲――春の海が厳かに流れていた。
目の前に饗されるのも伝統的なおせち料理に、お雑煮。
元日にも関わらず、いつも通り朝練を終えてリンクから戻った瞬間、朝比奈達に身ぐるみを剥がされ、あれよあれよという間に晴れ着に身を包んでいた。
そして今、新年の朝食の席に着いて、ぽりぽりと数の子を齧っている――苦しい帯を我慢しながら。
「………………」
(なんか、違うんだよね……)
ヴィヴィはダイニングルームを見渡し、首を傾げる。
暖炉の前には先日までは大きなツリーが飾られていたのに、今は門松が。
「私は西洋アンティークですよ」と主張の強い飴色のチェストには、どんっと鏡餅が鎮座している。
「明けましておめでとう」
羽織袴を纏った父グレコリーが真面目な顔でそう新年の祝辞を述べると、こちらも美しい着物を纏った母ジュリアンが「明ケマシテオメデトウゴザイマス」と不安定な発音で返した。
「………………」
(大体さ……門松って玄関先や門に飾るものじゃないの?)
ヴィヴィが2メートルほどの巨大な門松を見ながら、心の中でう~んと唸っていると、壁際に勢ぞろいしていた使用人達の長――家令が使用人を代表して挨拶する。
「旦那様、奥様におかれましては何時もと変わらず新年を無事にお迎えになられましたこと、従業員一同、心からお祝い申し上げます」
折り目正しい言葉に父はうんうんと頷くと、匠海に視線を移す。
「今年、匠海は大学3年生に上がり、ますます勉学と後継者教育の両立が厳しくなるだろうが、昨年に違わず頑張ってほしい」
「はい。精進します」
いつもならそんな改まった物言いをしない父の様子に、ヴィヴィの斜め前に座った匠海が背を伸ばして受け答えする。
「双子は今年から高校生になるし、シニアへ本格参戦だな。どういう結果になっても父は何も言わないが、自分に恥じない結果を残せるよう、全力を尽くしなさい」
畏まって袂(たもと)に腕を入れて腕組みをしながら言う父に、双子は顔を見合わせ。
すぐに父のほうを見てハモった。
「「はい、全力を尽くします」」
「うむ」