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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第14章
1月はシーズン真っただ中だが、意外に試合がない。
ヴィヴィとクリスは最後の世界ジュニアに向け、粛々と調整を進めていた。
運転手がリンクの裏玄関に車を寄せると、双子は自分の荷物を持って車から降りる。
裏玄関にはマネジメント会社のINGから派遣された、牧野マネージャーが待っていた。
今日は土曜日、夕方から練習をスタートする前に、双子にフィギュア雑誌の取材が入っていた。
「お疲れ。もう雑誌社の方みえているから、急いでくれる?」
30代前半でいかにもやり手な風貌の牧野は、時間よりも前に到着した2人を急かした。
「服装はそのままでいいよ。あ、あとヴィヴィはHP(ホームページ)の日記内容、メール着てないよ? 最低3日に1回は更新しないと」
「はい」
素直に返事をしたヴィヴィは更衣室に荷物を置くと、クリスと急いで雑誌社を待たせている会議室へと向かった。
雑誌社のインタビュアーは、以前も取材をされたことのある編集者だった。
挨拶をして席に着くと、まずは趣味や開設したばかりのHPの内容に関しての質問、全日本フィギュアでの感想と課題点等を聞かれ、それぞれについて答えていく。
その間、パシャパシャとカメラで撮られているので、なかなか緊張する。
「そろそろ時間ですので――」
腕時計を見ながら牧野が終了時間を伝えると、インタビュアーは居住まいを正した。
「では、最後の質問いいですか? 去年の年末、お2人共「オリンピックはまだ考えられない」とおっしゃられていましたが、その気持ちは変わりませんか?」
必ず聞かれるだろうと思っていた質問に、ヴィヴィはきゅっと唇を引き締め、隣のクリスを見つめる。
小さく頷いてみせたクリスから視線をインタビュアーに戻すと、薄紅色の唇を開いた。
「正直、全日本フィギュアが終わり、皆さんに『オリンピック目指すんでしょう?』と尋ねられたとき、何も考えていませんでした。本当に自分の事だけに必死で――」
言葉をとぎらせて視線を下げたヴィヴィだったが、膝の上で組んだ両手をギュッと握りしめて、顔を上げる。