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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から
「……」
僕は俯き無言のまま、手にした二つの商品をそっと差し出す。
すると店員は、素早くその一つを――ピッ、と。
だけど――それから数秒の間が生じて、店員は二つ目をレジに通そうとはしてない。
あれ……?
と、顔を上げた僕に、店員は無愛想に言った。
「年齢確認、お願いします」
は?
「ね、年齢確認が、必要なんですか?」
呆気に取られて、僕はそう訊ねる。
そしたら――
「ええ、未成年の方には、お売りできませんから――お煙草の方は、ですけど」
「あ……」
僕は、とても恥ずかしかった。年齢確認を求められたのは、カモフラージュの為に一緒に購入しようとした――煙草(タバコ)。
「あの……僕、実は未成年なので……」
「でしたら、申し訳ありませんが」
「わ、わかりました。すみません」
「では、ご購入は、コチラだけで?」
「はい……」
結果として吸いもしない煙草をカモフラージュにしようとしたことで、僕は余計な恥を上乗せしてしまった。それ以前に、それで少しでも誤魔化せると考えた自分が、とても愚かしく思える。はっきり言って、無意味過ぎた。
まあ、ともかく……。
「648円になります」
僕は苦慮して手に入れた避妊具(ゴム)を手に、寺井の待つアパートの部屋に帰って行くのだった。