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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から
辛うじて盛り上がりつつあったムードみたいなものを、自分たちで何度もクラッシュしながら。
それでも、真面目にふざけ合っている感覚。二人はいつものように、話す言葉を止めようとしない。
きっと、僕も寺井も――黙ってしまうのが、怖かった。
昨日までは、こんなことが現実だとは思わなかった。恋愛とかセックスとか、別の世界のことみたいだったから。僕は自然とそんなものを、とても遠くに追いやってしまっていたのだろう。
でも、こうして肌を触れ合えば、わかる。すぐ近くに、実感している、から。
だからこそ、例え変だと思われてしまっても、構わないと思う。僕はこれが『別次元』なのではなく、『日常』の中で起こってることだと、確かめていなければいられなかった。
たぶん、それは――寺井も同じ気持ちで。
とても不器用な二人が、互いの『日常』を見失わないように見張っている。「怖い」といった理由は、おそらくそんな感じだった。
見つめ合って確かめれば、それでだけでいい――だ、なんて。世の中に溢れたラブソングたちは、何時でもそんな風にメロディーを奏でてゆくのかもしれない。
だけど散々耳に鳴ったそれらのフレーズは、僕たちのリアルではなくて。だから、無粋でカッコ悪くても、いいと思った。
だって、これは疑いようもなく――僕と寺井夏美の――リアル――なの、だから。