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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
導かれるまま、電車に乗った。
二人は長椅子の座席に、一人分くらいの隙間を隔てて座っている。
「……」
「……」
ほんの少し背にした車窓を振り向き、適度な速度で流れる景色を眺めた。そらから視線を落とすと、木織との間に空いている座席を見つめた。
この距離は果たして、どちらが築いていたものだろう?
僕は漠然とそんなことを考えているから、電車がどちらに向かって行くのか――(未だ)――気にしなくてもよかったのだ。
けれど――
プシュー!
途中の駅で止まった時に、車両には大勢の人が乗って来るから。どちらからともなく身を寄せ――僕らは、ぴったりと肩を並んだ。その刹那――
あ……!
すぐ近くの木織の顔の頬の辺りが、ほんのりと紅くて――その顔を背けてしまったのを、見たから。僕はたぶん、もっと紅い顔をしているクセに――それを可愛いと、感じていた。
直後――そんな顔さえ知らずに、今までの僕は木織に一体、何をさせていたんだって――甘え過ぎてしまったことを頻りに悔やむと、心がざわつき始めてゆく。
そんなタイミングの、最中のこと。
「あのね――」
木織は初めて僕に――行先について、告げようとした。