この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
僕の視界はどんどんと歪み、意識は何処かへ飛んで行きそうになって――それでも。
「待って――」
木織の声がして、何とか僕を引き留めてくれた。
情けない僕に代わり、木織が彼女へ――挑んでいる。
「貴女が彼を責める権利なんて――ないと思う」
「どうして?」
「そんなこと――口にしなければ、わからないんですか?」
「だったら聞くけどさぁ。アンタは、あの夜にあったこと――どれだけ知ってる?」
「どれだけ……って?」
「そう、言えないよね。見てはないし、知らないもんな。その後で、ソイツからなんて聞いたかは知らないけど。それって、たぶん――かなり真実を、歪めてあるんじゃないの?」
「歪める――どういう風に?」
「つまり、さあ――確かにふざけ半分で誘ったのはコッチだけどぉ。その後で積極的に求めてきたのは、寧ろソッチの方だったってこと」
彼女は床に這いつくばる、僕を指差し――。
「え……?」
木織はとても意外そうに、短い音を発した。