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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

 負けん気の強い横顔と振りかぶった右手。それが身体を軸に反転し、勢いよく頬を打つと――


 あ……!


 僕の目に映ったものはと言えば、それは――木織の背中、だ。


 相変わらず極度に歪み狭まるような視界の中にあって、その後姿だけは輪郭がはっきりと見える。


 いや、違う。僕はその背中から、この目をはなしてはいけないと強く感じ、だから凝視していた。


 それは、何故だろう? わからない。だけど、理由なんてわからなくても、きっと――よかった。


 それはいつだって――そう。僕は、あらゆる場面でその背中を見つめていたのだから――。


 中学生になったばかりの頃。真新しい可憐な制服の姿に、思わず見惚れていた僕に――「先、行くから」――と、少し恥ずかしそうに駆け出した、その背中も。


 僕にあんなことが、あった後。声をかけたそうにしながらかけられずに、一瞬だけチラリと横目で、そのまま向いの家に入って行った、その背中も。


 華奢ではあるのに、背がスラリと高く、筋が通ったようにぴっとしていて。僕はその背中を見る度に「ああ、木織らしいや」って、そんな風に思っていたものだ。


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